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女の山登り入門  ひとりで山に入ること

山旅、お一人さま(遭難騒ぎ前科者の反省)


「まあ!ひとりで?!」 と驚かれる経験は、単独登山者のそれも女性なら毎度のことだと思う。 最初のころはひとりで山に入ることは、自分にとっては当然のことだったため驚かれるのが理解できなかった。 ショッピングや食事なら誘うことができる友人も、こと山となれば気軽にOKしてくれる人はまず、いない。 ましてや仕事があれば、確約できるかどうか前日夕方までできない。そうなると、どうしても一人歩きが主体になってしまう。
一人歩きで私にとって関門はふたつある。
ひとつは親。鳥海山や栗駒山など、親も登ったことのある山だと「気をつけて」の声が軽いが、それ以外の山になるとその声が心無しか重くなる。というのも私には前科がある。
小学校低学年の頃だったが、親戚と家族で山菜採りに行った帰り、私と従兄弟は子供特有の怖いモノ知らずの足で家族を後にさっさと下山し、駐車場に早く着いてしまい待つのも退屈だったので二人でそのまま歩いて家まで帰ってしまったのだ。普通の子供は帰れない遠くて複雑な道順だったが、一緒にいた従兄弟が、一度通った道はすべて覚えてしまうという特技の持ち主だった。
なんにも考えていなかった。早々に帰ってマンガを読んだりして遊んでいる間、山では子供二人が遭難したと大騒ぎになっていたのだ。
そんな親不孝をしでかしてしまったこともあり、一人歩きが気楽とは言っても親に切り出す瞬間は毎回少なからず心苦しい。だから、なるべく詳細な登山届けを心掛ける。言い訳のように今日の予備電池、非常食、防寒着云々を書き連ね、標高はこのくらいで、タイムスケジュールはこうで、といった具合。数十年前のようなあんな親不孝はしたくない。
もう一つの関門は、一人歩きに限らずだが「朝」。
血圧が低いため朝はひたすら後ろ向きだ。「クマに会うかも知れない」「足をすべらすかもしれない」「蜂もこわいよ〜」・・・。前夜、あれだけワクワクと早寝した自分が一夜あけると別人だ。このまま山行を中止することもできるのが一人歩きプランの負の誘惑。絶対、10時ぐらいには激しい後悔に見舞われるのだ。
ひとり歩きと言っても、日帰りばかりなのでそんなに怖い思いをしたことがない。もっとエキサイティングなホームページを作りたいが、のんびり楽しむのが私の山歩きなので、仕方がない。
しかしながら、同行人がいるときとの大きな違いは「緊張感の度合い」。不安な顔で見送る親への信用も落としたくないし、怖い思いもゴメンだから道中はずっと緊張している。クマに会うなんて滅多にないと言われても、絶対なんて言葉は禁物だし、簡単な道だとしても、ちょっと足を捻ったら帰れなくなるから、ストックはなるべく持って行く。ウエア類も晴天だとしてもきっちり装備。
緊張して一日を歩き回るせいか、登山口まで戻った時の開放感が一人歩きだと違う。その安堵感が充実感にすり替わって、日頃のストレスもろともここで解消されたりする。 きっと、この適度な緊張感が一人歩き登山をリピートさせる源なのかもしれない。ちょうどジェットコースターが楽しいと思うのと根っこが同じだと思う。

ひとりで山に入ること


□ 登山届けを忘れずに

登山届けにはどのコースを何時間ぐらいかけて登り、どこへ下りるのかという行動予定と、人数、連絡先、同行者氏名、装備などを記入して、登山口の専用の箱に入れる。単独の場合は、家族や知合いに行く先を告げていくことを忘れずに。日帰りでもどんな不可抗力が待っているか分からないものだし、山歩きへ送りだしてくれる家族や友人への心遣いでもあるのだ。そして一人歩きは、道中出会った人にも存在を記憶に止めてもらうようにする。女性の一人歩きだと珍しいので覚えてもらいやすいが、念には念を入れて目立つ色の帽子や服装をするのもいいと思う。

□地図や天気に強くなろう

山には「行動食」と「非常食」を日帰りであっても持って行く。「行動食」は行動するための食事。コンパクトで軽いこと、腐敗しにくく高カロリーのものを選ぶ。カロリーメイトやチョコレート、飴、ナッツ、ドライフルーツ、クッキー、せんべいなど。また余分な包装は山行前に取ってしまえば、ガサばらずにゴミも出さずに済む。団体行動の場合、これらを小休止で食べるが、ポケットなど取り出しやすいところに収納し、いつでも食べられるようにしておくことで自分の体調に応じた摂取ができる。また、仲間に分ける分まで気をつかう必要はない。自分のことは自分でが基本。普段の生活で食べ慣れたものも山では受け付けない場合もある。経験を重ねて、自分にぴったりな行動食を探すことを薦める。
(ばりこの場合:山ではパサパサしたものは受け付けなくなるので、りんごの蜜煮のドライフルーツとちょっと重くなりますがゼリー飲料がお気に入りです)

□非常食

山の細かな地形を読むには国土地理院の25000分の1、縦走などには50000分の1があると良い。これは大きな書店や登山用具ショップなどで扱っている。またインターネットでも閲覧や購入ができる。登山道が明瞭な山であっても、徒渉や崩壊に出くわすと道が見つけにくい場合が頻繁にある。また廃道や分岐などに差し掛かったとき、どちらへ進めばいいのか分かりにくいときも良くあるものだ。そんなとき、コンパスと地図があれば難なく切り抜けることができる。そのためにも簡単な読図が役に立つ。 また、天気の知識もあると良い。平地では天気が良くても、前線が近付いていれば山頂では平地よりも早くに天気が崩れる。また秋は雪の心配もあるので、それを見越した装備の判断にもなる。

□ 方向音痴の味方GPS

積雪のあるシーズンは登山道も雪の下。地元の方が頻繁に入る山だと赤布などが下がっているが、必ずしも頂上を目指したものであるとは限らないので、判断の補助程度に考える。道迷いから救ってくれるのがハンディGPS。必需品とは言わないが、あるに越したことはない。クルマのナビみたいにルートを教えてはくれないので自分で作成して読み込ませる。あるいは来た道をトラックバックしてくれる。ばりこは最低限の機能を備えたガーミン社のgeko301。

□ 準備はくどいほどに

日帰りであれ、一日充実させて楽しんでくるためにも、準備と情報収集は入念に。情報があれば、何かあったときの判断に役立つし、準備があればアクシデントへの対処ができる。情報はインターネットや書籍、地元の観光課などから得られる。