梅雨のまっただ中ではありますが、アブのいないこの一時、
わずかな晴れ間を捉えて、念願の羽後朝日岳へ部名垂沢を遡行した。
雨続きではあったが、途中の川の水に濁りもなかったので
予定通り決行。(地形図をクリックすると別ウィンドウで開きます)
羽後朝日岳へのアプローチは生保内から夏瀬ダムに伸びる林道を
途中、部名垂沢へ分かれて、終点までクルマを走らせる。
林道終点間際に、道が二手に分かれるがどちらもすぐに行き止まりで
小さな駐車スペースが出来ている。
先客もなく、登山口に近い左手の道に入りクルマを停める。
7時40分、出発。
駐車スペースからすぐに部名垂沢を徒渉して右手の林道跡へ出る。
地形図上では林道になっているが、ご覧の通り見る影もない。
しばらく沢の音を左に、踏み跡を拾って
オオイタドリをかき分け、時には沢を徒渉して進むと
めずらしい二段の堰堤が見えてくる。
天気は午前は持つ模様。しかし、
午後から雷雲と雨雲がくるかもしれず、往路はなるべく急ぎ足。
部名垂沢からのコースは、往復ともにこの沢を使うことになる。
和賀山塊中では、やさしい沢だと言われるが、久々の沢歩きへの緊張が
脚の動きをぎこちなくさせる。
沢沿いの踏み跡は、時折沢に入ったりしながら続く。
最初はミズが茂り、やがて胸まである秋田フキに、
そしてオオイタドリに代わると、人の背丈を超えて行く手を阻む。
時折、アイコがかきわけた手をチクリと攻撃してくる。
9時20分頃。
踏み跡がなくなって、ゴーロ歩きが始まって間もなく、
左側に崩壊地と、その奥に滝が見えた。
こうした崩壊して押し出された跡が随所にある。
9時50分。右手にかっこいい滝を眺めながら通過。
このあたりはしばらく、広く開けた河原歩きで清々しい。
それでも苦手なゴーロ歩きに緊張は続く。
10時。またもや崩壊地。そのヘリを行く。
脚にぶつかる久々の沢水の水圧に慣れず、
転倒し早くも水遊びしてしまった。
10時4分、下二股到着。右側からガレ沢が合流するポイント。
真向かいにはようやく目指す稜線が遠く見える。
ここまでは、さほどの登りもないゴーロ歩きだったが、
この先、沢幅が狭まって傾斜も出てくる。沢登りらしくなってくる。
この左側へ入る。
下二股から左へ入って15分ほどで、小滝が出てくる。奥にもう一段あって
二段の滝。ここからはその二段目が良く見えない。
二段の先の上部。結構、長い滝。
10時45分。
残雪が現れてその奥に、複数の段で出来た長〜い滝が伸びていた。
二股到着。
こちらは登らず、この左側の本流を進む。
沢はここで左へカーブして、より急峻な登りになる。
ここから先は、こんな崩壊地。
沢は狭まって、稜線までの400mを詰める急登となる。
このあたりから、遠く北側から雷の低い重低音が聞こえ始める。
まだ遠いから大丈夫のようだ。
10時57分。この先は滝が連続する。
この滝は左側に巻き道。リッジ状の岩を越えて行くのだが
写真で見るよりも急で、ちょっとした岩登り。
傷んだトラロープがあるが、かえってキケン。
11時10分。苔滝。名前の通り、苔むしている。
誰が張ったのかトラロープがここにもあるのだが、
信頼性の低いロープに頼ってはイケナイ。
ここは左側をクライミング。ホールドは豊富。
11時27分。ちょっとかっこいい滝。
こちらは右側を巻く。
この辺は、沢底も石も赤く染まっている。
石だらけのガラガラで急な赤い沢を登って行くと、
湿地からとっても冷たい水がコンコンと湧き出している。
この湧き水に鉄が含まれているみたい。
11時50分。
最後の滝になった。ここでようやく赤い滝は終わり。
水も岩もきれい。鉄分たっぷりのミネラルウォーターよりも
やっぱり軟水が美味しい。ここで給水のラストチャンス。
最後の滝を越えるとすぐに、沢の水はなくなった。
ぐっと狭まった枯れ沢を、あとは稜線めざしてひたすら登る。
ここから先、思ったより長い急登。
これは貴重種、オサバグサ。花ははじめて見た。
12時20分。稜線に出た。
長い沢歩きの緊張から解放されとにかく嬉しかった。
ここで小休止して、空身で山頂を目指す。
いつのまにか、雷は静かになり空は青空がまだらに覗く。
米粒よりはさすがに大きいが、小さい小さいコメツヅジ。ラブリー。
そしてウスユキソウ。見頃だった。
さて、山頂までの稜線はさぞかし気持ちのいい草原歩きかと思いきや、
踏み跡がかろうじて分かる程度で、まるで廃道のような
埋没っぷり!時折、灌木をかき分けながら、足が入るところを
拾って進む。
前ピークを過ぎると羽後朝日が視界に広い。
花畑はまだ少し早かったようだが、
今年初のニッコウキスゲに満足。
こちらは、咲き始めのオノエランっぽい。
13時7分。山頂到着。標柱と、そのそばに古い石に「朝日嶽」
ずいぶん昔から登られていたのか?
まずは、大事にもってきた冷たい飲み物で登頂を祝った。
山頂からの景観の素晴らしさには驚いた。
こちらは生保内沢の源流方面。
今まで眺めた山頂展望の中でも抜群に素晴らしい。
こちらは来た道を振り返って。
こちらは和賀岳。5月に登ったときは、
あちらから羽後朝日を眺めてました。
さて、タイムリミットもあり雷雲も近づいているので早々に退散。
もっといたいけど、我慢。
谷の向こうに夏瀬ダムが光っている。
ここからは遡行ルートが俯瞰できる。
さて、急ぐ理由は天候もさることながら、明るいうちに下りたいから。
稜線を過ぎ、沢が出てくると、再び雷が唸り始める。
今回は近い様子で、音も大きく時々空が光る。
下山では滝はザイルを出してもらって、肩がらみ下降なども
レクチャーされながらおっかなびっくり高度を下げて行く。
ここが一番難儀した。滝の横のリッジ状の岩。
私はザイルに掴まって下降だが、T中さんはフリーでさっさと。
登るときは何とも思わなかったけど、巻き道は下りではほとんど崖。
そして、沢は浮き石がごろごろしていて、うっかりすると、
落石させそうで
神経を遣う。
途中、雨がぽつぽつ来たが本降りにはならずに済む。
予想通りの天気で、ほっとしたが、天気の崩れとともに
周辺はガスが出てきて15時にして薄暗くなり始めたので
ヘッデンを取り出しやすいよう準備する。
再び堰堤にたどり着き、踏み跡が現れるころ、空は回復し明るくなる。
17時20分。クルマに到着。登り約5時間、下り4時間弱。
がっつり登山、無事終了。
すっかり天気は回復し、傾きかけた日差しが美しかった。
無事に帰って来れ、山頂に到着したときと同様にうれしい。
シラネアオイが一輪だけ、けなげにがんばっていた。
今シーズン最後の一輪かな。
コメント
部名垂沢、数年前から行きたいトコナンバー1です。
今はワタクシこそがヘナタレなので、来年チャレンジしたいなぁ?
それにしても写真からでも十分わかる、氏の身軽さ(笑)
手を後ろに組みながら、岩場をサッサと進む…
いつになったらできることやら。
とりあえず今年は赤水沢で水遊びで満足、満足(我慢、我慢!)
ヘナタレって緩い名前に合わず、ハードでした。
浮き石だらけの不安定な沢なので、
私は、ほとんど4輪駆動状態(^^;
稜線に出てからとても素晴らしくて
どこでもドアがあったら、間違いなく行く場所に
エントリーです。
『水が涸れてから稜線までが辛かった』と言ってました。
往復10時間の長丁場・・・蒸し々の今時期は厳しいですね。
アブも嫌いですが、歳とともにブヨに刺されると
治りが遅くなった気もします。
温泉でT中さんとバタ〜り、びっくりしました(笑)
美女2人だったらダンデ〜なおやぢも誘って
もらいたかったってね(笑)
東山、おやぢもいつか辿りたいですね。
先日登られた方って、私たちの前日ぐらいですか。
地形図、落としてましたよ〜。
もしやその方かな。
確かに稜線まで、すぐかと思ったら
結構ありまして、くじけそうでした。
初歩的な沢登りの技術が必要、と聞いたので
緩いかとおもったら、体力と根気も必要でした(^^;