コシアブラのシーズンも終わってしまったと、一抹のさみしさを感じながらもはや頭上高く葉を広げるかの山菜の女王を見上げていると、ほれ、と山仲間からボンナという山菜を教えてもらった。
とはいえ、この世にコシアブラに代わる味覚があるものか。
形はユニークだ。しかし所詮は草だろうと侮っていた。
おひたしにして口に入れた瞬間の衝撃たるや。
飯がすすむ。酒もすすむ。さすがは山菜御三家。
プロフィール
ホンナ・ボンナ(ヨブスマソウ・イヌドウナ) |
ホン菜・ボン菜(夜衾草・犬唐菜) |
キク科 |
ホンナの本家はヨブスマソウ。
秋田県ではヨブスマソウの変種イヌドウナをホンナとして採取している。
名前の由来
採るときに折ると、ボンナと音がするからとの説がある。
そんなまさか。
疑いつつもさっそく折てみるが、私にはその音は聞こえなかった。
ボンナのおいしさを知った身としての推測ではあるが、ホントにおいしいナ♪という喜びの言葉が短縮されてできた名前なんじゃなかろうか。
そして本名はヨブスマソウ。
漢字で書けば夜衾草。
直訳すれば夜の布団の草。
なのだが夜衾(よふすま)というのは空飛ぶ座布団、つまりムササビのことを指す。
(ちなみに空飛ぶハンカチはモモンガちゃん)
ヨブスマソウというのは、葉の形がムササビが飛翔する姿に似ていることに着想を得た名前らしい。
わが秋田県ではこのヨブスマソウの仲間のイヌドウナがホンナとして採られている。
犬唐菜、と書く。
方々調べたが語源がわからないので、こんなときは高橋勝雄氏の「野草の名前:山と渓谷社」の出番である。
イヌを冠する名前の植物は多く、そのほとんどは「劣るもの」としての意味である。
たとえばイヌツゲ、イヌザンショウ、イヌタデなどなど。
さてこのイヌドウナ。
食べてこんなに美味いのに「イヌ」とつくとは、本家のヨブスマソウはさらに想像を絶する旨さなのだろうかと思ったら「否」だった。
イヌは「否」の意味で、唐菜は異国の菜葉のこと。
つまりこんなヘンテコリンな形の葉っぱだけれども、異国の菜葉にはあらずという意味がこめられてイヌドウナ、なのだそうだ。
まわりくドウナ。
分布
北海道から関東のやや日が射す林のなか。
食べごろは春から初夏にかけて。
レッドリスト(イヌドウナ)
絶滅 | ー |
絶滅危惧Ⅰ類 | 広島 |
絶滅危惧Ⅱ類 | ー |
準絶滅危惧 | ー |
見分けるための特徴
葉っぱの形が特徴的なので、この顔にピンときたらイヌドウナ。だ。
本家のヨブスマソウは、葉っぱがもっとトンがっている。
ヨブスマソウもイヌドウナも、タマブキも共通している特徴は、葉の付け根。
茎を抱き込むような、まるで柄杓のような形をした葉っぱである。
間違いようがないユニークな形状。
食べる部分
採取のしかた
理想を言えば、新芽が20センチに満たないうちがベスト。
このような理想のホンナに遭遇したら、根本からポキンと摘み取る。
だが、もっと育ってからでも食べられる。
30センチ以上にも育った場合は、一番上の葉の、茎を抱き込んでいる柄杓の付け根を指で折ってみる。
ぽきんと折れれば、まだ美味しく食べられる。
食べごろは春から梅雨前ぐらい。
調理例:とりあえず、おひたしにしてみた
味は大人好みの、山菜を食べる喜びに満ちた独特の爽やかな香味。
お浸しだけではもったいないかも。
和風パスタで大葉のようなポジションで使ったり、三つ葉ポジションを狙っての卵とじ丼のアクセントやお吸い物などなど、夢が広がる。
だがまさかそんなに美味しいとは知らず、全部茹でてしまったので今回は、醤油をつけてご飯で。
うっま〜!
あつあつごはんが進む、進む♪
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