【鳥海山コースガイド:矢島口コース(祓川口)】初心者でも登れる?最短ルートってツライ?

【鳥海山コースガイド:矢島口コース(祓川口)】初心者でも登れる?最短ルートってツライ?


東北第二の標高を誇る鳥海山。

日本海からすらりと起立する姿は美しく

出羽富士とも呼ばれるほど。

日本百名山でもあり、オンシーズンには

地元はもちろん全国から登山者が押し寄せます。

 

人気の象潟コースは駐車できないほどの混雑も。

その一方で、この矢島口コースは

比較的登山者も少なく静かな山歩きが楽しめます。

ハイシーズン、駐車場の混雑を避けるなら

矢島コースを選んではいかがでしょう。

 

とはいえ、どんなコース?

初心者でも登れるの?

一人でも怖くない?

クマは?

そんな疑問にお答えします!

 

矢島コース(祓川口)ってこんなコース

数ある鳥海山コースのなかでも

最も古い歴史があるのがこの矢島コース。

鳥海山は1000年以上も前から

神域として崇められてきた。

 

このため修験の場としての長い歴史があり

矢島コースはもともとは

秋田県側の修験者たちによって開かれた道。

修験、というストイックな言葉からも

およその察しがつくかと思うが、

このコース、外輪山までひたすら直登する、

ややキツイコースだ。

 

その分、数ある鳥海山登山コースのなかでは

最も短時間で山頂に立つことができる。

コースを康新道に取れば

山体崩壊を起こした北面の

荒々しい山容を間近に見られ

これは他のコースにはないこのコースだけの

迫力の景観である。

 

東斜面の登山道で、午後の日差しが届きにくいこともあり

遅くまで残雪がある箇所も。

夏は雪渓が固く締まって滑落のリスクがある。

このため軽アイゼンがあると安心。

コース詳細は実際に登ってみたレポをどうぞ!

コース概要

□標準タイム:登り4時間、下り約3時間。

□距離往復:約10km(舎利坂往復)

□累積標高:約1200m

□山中の避難小屋:七ツ釜避難小屋

□山中のトイレ:七ツ釜避難小屋

□水場:湧水などはなく沢や雪解け水を利用する。

※ただし8月下旬には枯れることもある。

□売店:山頂の大物忌神社で

営業期間中は水など購入できる。

※大物忌神社までは外輪山から急斜面を下る必要がある。

参考コースタイム

コースタイムは標準タイムで

休憩時間などは含まれない。

標準タイムは山慣れた登山者が

日帰り装備程度の荷物で登った場合なので

初心者などは1.2倍〜1.5倍でプランニングするのが安心。


登り①舎利坂コース4時間15分/4.8km:祓川登山口==90分==七ツ釜避難小屋==60分==氷ノ薬師==60分==七高山==35分==大物忌神社==10分==新山

登り②康新道コース4時間25分/5.3km祓川登山口==90分==七ツ釜避難小屋==40分==台==90分==七高山==35分==大物忌神社==10分==新山


下り①(舎利坂)3時間/4.8km:新山==40分==七高山==40分==氷ノ薬師==40分==七ツ釜避難小屋==60分==祓川登山口

下り②(康新道)3時間30分/5.3km:新山==40分==七高山==100分==康新道から七ツ釜避難小屋==60分==祓川登山口

 

登山前に想定しておくリスク

気象①:悪天時の康新道

康新道は樹林帯を抜けると展望が

良くなる一方で、鳥海山新山北面に面した、

片側が切れ落ちた崖のふちを辿る道となる。

このため、強風時や雨天などで

転倒の危険が増す気象条件では

こちらよりはリスクが低い

舎利坂コースをおすすめする。

康新道は断崖の際にあるため崩壊しやすく、

数年前に崩壊したばかりの箇所もある。

こうした新しい崩壊地は

不安定で崩れやすいため

通行の際にはなるべく立ち止まらず、

速やかに通過するなど十分な注意が必要だ。


気象②コースの向き

矢島コースは鳥海山の東面にあり、

このため午後は早くに日陰となり

冷え込んでくる。

 

汗で衣類が濡れたままだと

汗冷えなどから夏であっても低体温症の

リスクが高まる。

 

衣類は速乾性の高い登山用を用い、

ドライレイヤーも活用したい。

また体温調整できるよう

夏であっても必ず防寒着も持っていくこと。


気象③夏場の雪渓

賽の河原付近や御田は遅くまで雪渓が残る。

特に御田付近では斜度もあるため

雪が固く締まる夏場などは

アイゼンがないと登り下りができない場合もある。

軽アイゼンを忘れずに装備しよう。

 

また雪渓の両脇や中央などは

雪が薄く割れやすい。

このような箇所にはなるべく近づかないよう

注意して通過する。


地形リスク

康新道は崩壊しやすいガレ場なので

バランスを崩しやすく転倒のリスクも高い。

下山時の疲労の溜まった足で下れば

さらにリスクは高まるだろう。

したがってこのコースを使いたい場合、

荒れた道に慣れていない人や

下りが苦手な人がパーティーにいる場合は

登りで使うことをおすすめする。


舎利坂はザレ場の急斜面なので

とにかくズルズルと滑りやすい。

一歩を大股で踏み出すと余計に

ズルっと滑って余分な体力を消耗してしまう。

小幅で根気強く一歩一歩を進めるのがコツ。


有害生物①:クマ

鳥海山の山腹にはブナの森が広がり、

一帯がツキノワグマの生息地である。

このため登山口付近やアプローチの道路脇でも

クマとの遭遇の確率は高い。

 

また康新道の森林限界を越えたヤブも

クマの生活圏内であり目撃情報も少なくない。

このような場所を通過するときに有効なのが

音やニオイなどで自分の存在をクマに知らせること。

 

クマに自分の位置を知らせるための音としては

釣鐘型のベルが最も有効との実験報告もある。

ラジオなどはあまり遠くまで音が届かないため

登山中にはあまりおすすめできない。

ボリュームを上げたところで

他の登山者が迷惑なだけである。

 

またクマの嗅覚は鋭くニンゲン以上にニオイに敏感だ。

携帯用の蚊取り線香をぶら下げて登れば

風向き次第ではあるが

虫除けとともにクマへの対策にもなる。

 

なおクマは食べ物への執着が強いので

食べ残しやおやつなどを山中に

絶対落とさないこと。

ヒトが食べ物を持っていると知れば

クマ避けを鳴らせば逆に

付きまとわれるケースもある。

 

万が一の遭遇のためクマ避けスプレーを

携帯すると安心だ。

 

ツキノワグマは基本的には

ヒトとの接触を避けるとされるが

6月の繁殖期、

10月〜の冬眠のための準備期間などで

気が立っているときや

出会い頭の遭遇で動転したときは

攻撃してくる場合がある。

このような期間はとくに遭遇しないよう

対策をしっかりして入山しよう。


有害生物②:スズメバチ

樹林帯ではスズメバチにも注意しよう。

スズメバチは攻撃性が強く

万が一刺された場合は命に関わってくる。

 

スズメバチと遭遇したら刺激しないこと。

・大声で騒がない

・振り払わない

・急な動きをしない

じっとして去るのを待つか、

スズメバチの飛ぶ位置が高いようなら

姿勢を低くして静かにその場を離れる。

スズメバチの視界は下を見ることが苦手なので

姿勢を低くすることで彼らの視界から

消えることができるのだ。

 

また香水のニオイも彼らを刺激するため

山に行く日は香水や香料のきつい化粧品などは

避けることを忘れずに。

 

登山口までのアクセス

公共交通機関の運行がないため、

車かタクシーなどを利用することになる。

車の場合はナビに「祓川展望台」または

「祓川キャンプ場」と入力する。

 

アプローチの車道は舗装されているが

カーブが多いので対向車に注意が必要。

 

象潟方面(国道7号方面から)

 

横手方面(道の駅東由里)方面から

登山口情報

駐車場

林道終点地と、その手前のキャンプ場前に

50台ほど停められる駐車場がある。

春スキーシーズンが最も混み合い、

駐車が困難になるがそれ以外は

ほぼ問題なく駐車可能。

トイレ

駐車場に男女別の水洗トイレがある。

コース中、七ツ釜避難小屋には

男女兼用のバイオトイレがある。

売店・自販機

登山口にはないので

予め下界で必要な買い物をすませる。

山小屋

登山口に祓川ヒュッテがあり

期間中は管理人が入る。

利用期間は4月下旬〜10月下旬までだが、

通年一部解放されており冬季間も利用可能。

□宿泊料金:1830円(令和6年)

※管理人がいる期間のみ有料。

□水道:あり

□ガス・電気:管理人がいるときのみ使用可能。

□予約:不要

バッジやコーヒーなど管理人がいる場合は

購入できる。

小屋前に水が引かれていて

自由に使うことができる。

 

登るための装備

登るための体力レベル

「初心者にも登れるか」については

スキル面では難しい部分はなく、

経験者とともに登れば問題はない。

 

しかし段差の大きな箇所が多く

これを通過するために足の上げ下げが続くことから

筋肉疲労を起こしがちなコースである。

難しいスキルは不要だが

長い時間を行動するための

体力と筋力は必要となる。

 

普段からの運動習慣がない場合は

特に中高年の場合は

1ヶ月前ほどからスクワットなど

筋トレを行うことをおすすめする。

軽めのジョギングも週2、3回すると

さらに心強い。

 

このような下準備をした上で、

登り切るコツとしては

スタートの30分は極力ゆっくりと

おしゃべりできる程度のペースで登る。

徐々にペースを上げ、

難所や急登ではペースを下げる。

このように緩急の配分を行い

無駄な体力筋力を使わないことだ。

持っておくと安心な装備

通常の日帰り登山装備のほか

特にあると良いのが次の装備。

□軽アイゼン(8月中まで雪が残ることもある)

□クマ避け対策

□アミノ酸サプリ

□足攣り対策(サポーターや漢方薬)

祓川口から矢島コース、登ってみたレポ

 

祓川口から七ツ釜小屋へ

祓川駐車場から舗装された歩道を

緩やかに進めば祓川ヒュッテだ。

建物の前には水が引かれていて

冷たい水がじゃんじゃん流れ出ている。

 

ヒュッテから矢島コースがはじまる。

目の前には竜ケ原湿原が広がり、

目指す鳥海山と、右手にはどっしりと

稲倉岳も展望できる。

 

この湿原に敷かれた木道を

8月ならウメバチソウやサワギキョウ、

リンドウなどに見送られながら

ポクポクと進む。

このコース1番ののどかな行程だ。

 

湿原が終わりダケカンバの樹林帯に入ると

右手に祓川神社がある。

かつて祓川ヒュッテの小屋番を

長年務め、この先の康新道を作った

佐藤康氏の写真などもここに収められている。

きょうの安全登山のため

手を合わせてから出発する。

この先、急登がはじまって

「タッチラ坂」の標柱が出てくる。

タッチラとはダケカンバのこと。

 

振り返るとヒュッテの赤い屋根が

湿原のなかにポツンと。

 

ダケカンバの道がやや平坦になると

目の前が開けて賽の河原に出る。

ここは遅くまで雪渓が残り、

夏場などはひんやりと気持ちがいい。

 

賽の河原からまた急な道を登って

また視界が開けるのが御田。

こじんまりとした高層湿原スポットだ。

柵などが設置されていないのだが

湿原に入るのはやめよう。

一度痛んだ湿原は修復に数十年を要する。

 

御田の湿原からの岩がゴロゴロした急な

登りが終わると

七ツ釜小屋の標柱があって

さらに進むと康ケルンがある。

七ツ釜避難小屋は登山道からやや下る。

男女兼用のバイオトイレがある。

 

七ツ釜避難小屋からは

岩が散乱する巻道だ。

チョウカイアザミやミヤマリンドウ、

8月でもヒナザクラが見られることも。

 

登山道の左手、灌木の向こうを覗けば

七ツ釜が。

夏場は水が枯れがちだが

見事な釜が連なる一枚岩の滝が見られる。

舎利坂コースへ

七ツ釜から段差のきつい登山道を

しばし進むと視界が開け

新山がだいぶ近くに迫る。

ここは舎利坂コースと康新道との分岐。

本日は登りで舎利坂を行く。

 

登山道は岩にペンキで目印がある。

迷うような箇所はない。

 

このあたりは大雪路と言われ

その名の通り遅くまで雪渓が残る。

雪渓があるとルートが分かりにくくなるので

ペンキの目印や先行者の足跡など

慎重に確認する。

 

氷の薬師付近はいよいよ

岩のサイズも大きくなり

景観もよりダイナミックに。

岩はおおむね安定している。

 

大きな岩を越えたり降りたり。

下山のときなどこの動作が

疲れた足になかなかしんどい。

 

舎利坂が近づくと登山道は石畳の階段に。

ミヤマトウキやシラネニンジン、

シロバナトウチソウなどに

寄り道しながら最後の登りへ。

七高山へ

舎利坂の名前の由来は

お釈迦様のお骨を示す「舎利」だ。

砂礫と石でずるずると滑って

とてもやっかいな登山道だ。

この行程では今一度「舎利」の名を思い出し

大事に大事に一歩一歩を丁寧に登ることだ。

小幅で丁寧に進めば、ずるずると滑ることも少なくなる。

 

本当に良い教えを含んだありがたい地名である。

 

舎利坂から解放されてようやく

外輪山に立つとほっとする。

外輪の最高峰、七高山は目の前だ。

 

七高山から新山を望む。

七高いという名の山であるが

新山の2236mよりも7メートル低い

2229mが七高山の標高だ。

 

大物忌神社と御室と呼ばれる宿泊所は

外輪山を降りたところにある。

山頂に水マークがあるが、雪渓の雪解け水を示す。

時間がないときは大物忌神社の売店が

営業中ならば500円で飲料を購入するほうが早い。

 

七高山から見下ろす稲倉岳。

御浜を稲倉岳を結ぶ痩せ尾根は

蟻の戸渡りと呼ばれる。

外輪山から新山へ

七高山までで満足して下山する場合もあるが

せっかくなので新山へ。

七高山から外輪を辿っていけば

新山への分岐がある。

岩場のかなり急な斜度なので

落石に注意しながら降りていく。

 

いよいよ新山への登り返しだ。

この先は岩の間に物を落とすと

取れなくなるので落としそうなものは

あらかじめしまっておく。

 

また、ポールは両手を空けるため

しまった方が良い。

 

新山へのルートは2本あり、

最短で登るなら東側のルート。

こちらなら標準タイムで10分だ。

ただし、もう一本の別のコースより

ガレ場が崩れやすく登りにくい箇所もある。

時間に余裕があるなら

西側のコースが比較的登りやすい。

なおどちらも岩場のコースとなる。

ルートは分かりにくい箇所もあり、

またペンキなどで印はあるのだが

まばらなので、泥などが付着した

人が歩いた後のある岩を辿っていく。

おつかれ山!

山頂は2畳ほどの狭さなので

登山者が多いと順番待ちになる。

時間に余裕があるなら

大物忌神社に立ち寄ろう。

飲料は水やスポドリ、ビールなどがある。

もちろんお守りや御朱印も。

 

七高山から康新道を下山

いったん七高山まで戻り

舎利坂コース入口までくれば

廉新道分岐があって外輪の山腹の巻道に入る。

 

巻道から先は鳥海山の北面の

断崖のフチにある道を進む。

ところにより崩壊が激しいので

新しい裸地には入らないこと。

 

尾根上のルートが崩壊や岩場で

通過が厳しい箇所では灌木の道になる。

刈り払いがされていないと

ルートが分かりにくくなり

無駄に藪漕ぎすることになるので

足元の踏み跡を見失わないように。

 

ルートがわからなくなったら引き返し

改めて踏み跡を探す。

ルートファインディングに慣れていれば

少しのあいだ藪をかきわけて左寄りに進めば

登山道に戻ることができる。

 

鳥海山北面の大きな谷からは

ガスが沸き立って迫力がある。

 

このコース上では鳥海山の固有種、

チョウカイフスマも群生する。

小さい花なので見落とさないように。

 

ここから「台」まで

目の前には北面の大きな谷、

日本海、遠く男鹿半島、

振り返れば新山などなど展望が素晴らしい。

晴れているならぜひ歩きたいコースだ。

 

台と呼ばれる展望地を過ぎると

灌木帯の小沢を越えて

往路のコースと合流する。

 

下山後の温泉

秋田県の横手方面へ帰る場合

フォレスタ鳥海

公式サイトはこちら

□日帰り入浴:大人500円

□無料休憩室あり

鳥海山荘

公式サイトはこちら

□日帰り入浴:大人400円

□利用時間:7時〜21時

□昼食時間:11時〜14時

□夕食時間:15時30分〜21時

※秋田由利牛定食もありおすすめです!

象潟方面へ帰る場合

鶴泉荘

紹介サイトはこちら

□日帰り入浴:大人400円

□利用時間:10時~20時

※向かいに人気のラーメン屋さんあります。

道の駅ねむの丘

公式サイトはこちら

□日帰り入浴:大人450円

□利用時間:9時~21時

※レストランやお土産ショップも。

名物の鳥海山が育む大きなカキもここで食べられます!

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