紅葉シーズンにもおすすめ 東北百名山「乳頭山」がもっと楽しくなる馬蹄方縦走コース

紅葉シーズンにもおすすめ 東北百名山「乳頭山」がもっと楽しくなる馬蹄方縦走コース

2024年7月13日、秋田駒ケ岳八合目から

笹森山、湯森山、笊森山、

千沼ケ原経由、乳頭山、

蟹場コースを使っての馬蹄形縦走を。

 

このコース、展望も良い上に

変化に富みながら登り標高も少なく

充実のコースだ。

花のシーズンも良いが、紅葉シーズンにも

おすすめ。

 

コース概要

YAMAPログはこちら

乳頭山は奥羽山脈を成す一座で、

秋田駒ケ岳の北東にある。

標高1478m。

日本300名山であり、また

東北百名山にも数えられる。

 

乳頭山への一般的な登山コースは

麓の乳頭温泉郷からの3本のコースを使う。

黒湯温泉を起点とする一本松温泉コース、

孫六温泉を起点とする孫六コース、

蟹場温泉を起点とする蟹場コースが

その3本。

 

これらの3つの登山口は

徒歩でも移動可能な範囲なので

このコースを組み合わせた周回コースを

とる登山者も多い。

 

しかし乳頭山登山を、

より充実したコースにしたいなら

おすすめは秋田駒八合目から

乳頭山を目指し、先ほどのいずれかの

登山コースを下山に使う馬蹄形コースだ。

このコースを使えば、

いくつもの池塘をちりばめた高層湿原の

千沼ケ原(せんしょうがはら)湿原に

立ち寄ることも可能。

 

さらに下山コースを蟹場コースに選べば

稜線上の田代平湿原を渡ることもできるので

東北の山らしい、重厚で伸びやかな景色を

たっぷりと味わうことができて

満足度もより高くなる。

 

コースタイム目安

秋田駒ケ岳八合目→乳頭山まで:約4時間

秋田駒ケ岳八合目==40分==笹森山分岐==40分==湯森山==80分==笊森山==20分==千沼ケ原(笊森山分岐)==65分==乳頭山

乳頭山から下山コース

①乳頭山→蟹場コース下山:約2時間/5.4km

乳頭山==30分==田代平山荘==50分==蟹場分岐==40分==大釜温泉登山口

②乳頭山→孫六コース下山:約2時間/4.2km

乳頭山==30分==田代平山荘==90分==孫六温泉

③乳頭山→一本松温泉コース下山:約2時間/3.4km

乳頭山==90分==一本松温泉跡==30分==黒湯温泉

令和6年現在のコースの整備状況

乳頭山までの登山道

秋田駒八合目から湯森山までの登山道は

刈り払いされていて比較的歩きやすい。

八合目から笹森山への登り返しで

赤倉沢を渡渉する。

雨天時は増水に注意。

 

湯森山から先、乳頭山までは

この数年は刈り払いがされておらず

ところによって胸までの笹藪となる。

足元が見えないため歩きにくいが

道迷いする箇所はない。

朝露でズボンや靴が濡れるので

早朝はスパッツや雨具の下を履くのがおすすめ。

 

蟹場コース

令和6年現在、刈り払いされてだいぶ

歩きやすく快適になっている。

他の2本のコースよりも距離は1キロほど

多く歩くことになるがどのコースを使っても

時間的にはあまり変わらない。

 

一本松温泉コース

最短で下山するなら一本松コースだが

あいにく令和6年現在、

登山道の橋が崩落し通行止めとなっている。

ガイドマップには荒れていると書かれているが

急登には丸太の階段が整備され、

登山道はしっかりしている。

一本松温泉跡を過ぎ、渡渉があり

ここがやや薮気味だ。

下山で使う場合はあまり迷わないが

往路に使う場合は、

薮で目印が隠れていることがあり、

登山道に気づかずに沢を遡行していく人もいる。

周りの地形と地形図を参照することをおすすめする。

 

孫六コース

孫六コースは使う人が最も多いコースだが

アオモリトドマツの樹林帯では

木の根が張った登山道でさらに

露出した泥が滑りやすく

雨天が続いたあとなどはやや歩きにくい。

 

難易度

秋田駒から乳頭山縦走コースは

千沼ケ原をプラスすれば

歩行距離で13km〜14km。

累積標高は600m弱ほど、

下りは累積1100m弱となる。

 

登り標高が比較的少ないので

心肺機能への負担は少ない方だ。

 

歩行距離がやや長いので体力的には

やや中級レベル。

途中、技術的に難しい箇所はないが

薮に不慣れな場合は不安に感じるかもしれない。

 

薮の下に朽ちかけた木道があり

濡れていると滑りやすい。

慣れていないと薮で時間を費やすので

コースタイムは多めに見ておくことをおすすめする。

アクセス

クルマで登山口まで

ナビに「アルパこまくさ」と打つのがおすすめ。

国道341号から田沢湖方面との十字路を

県道127へ。

田沢湖スキー場を過ぎ

田沢湖高原温泉郷方面へ進むと

アルパこまくさの標識がみえてくる。

 

秋田駒ケ岳八合目は

マイカー規制となっているため

アルパこまくさから秋田駒ケ岳八合目へ

登山バスで向かう。

バスは6:01発(10月運休)、6:26着

6:31発、6:52着

7:07発、7:32着

7:42発、8:07着が

日帰り縦走にちょうどいい。

料金は片道630円。

公共交通機関で登山口まで

田沢湖駅前からアルパこまくさまで

バスが出ているので

これを利用するのがおすすめ。

5:30発(10月は運休)6:01着

6:00発、6:31着

6:33発、7:07着

8:15発、8:49着(八合目着は9:14)

注意)バスは6月1日〜10月20日ごろまで土日祝日運行するが、6月21日〜8月15日(令和6年)以外は平日の運行はない。

この場合はタクシーかレンタカーを使う。

下山後の足

7時から18時まで1時間に一本の割合で

蟹場温泉〜アルパこまくさ間でバスの

運行があるのでこれを利用するのが

リーズナブル。

羽後交通バス時刻はこちら

 

車2台あるならば

乳頭温泉郷入り口にある、

旧乳頭スキー場跡の駐車場に1台

デポすれば、下山口の大釜温泉から

歩いて10分〜15分程度の距離である。

山行レポ 2024年7月13日

車2台使いたく、矢留山岳会仲間に下見登山に

付き合ってもらう。

車1台を乳頭温泉郷入り口の駐車場にデポ。

旧乳頭スキー場の向いにある。

ここはきれいな水洗トイレもあり

なにかと重宝する。

ガイドマップには、温泉郷のなかに

登山駐車場があるようなマークが記されているが

あれらは温泉客用の駐車場なので要注意。

 

アルパこまくさから7:42発の

八合目行き登山バスに乗車する。

八合目から笊森山へ

8:10ごろ、八合目を出発。

ほとんどの登山者は秋田駒方面へ向かうなか

我々は逆方向へ向うことになる。静かでよい。

登山口では7月中旬とあって、

ニッコウキスゲがちょうど見頃だ。

 

木道の滑りやすい登山道が過ぎると

下りとなってやがて赤倉沢を渡渉する。

 

渡渉のあとは登りとなって

大きく洗掘された登山道をしばし。

途中にハシゴが2箇所ある。

今年の大雨で1箇所、ハシゴが壊れたが

登りにくくなる程度で行動に特に支障はない。

 

穴倉のような洗掘登山道が過ぎれば

一転して伸びやかな草原の山腹となる。

笹森山への登りだ。

 

振り返れば、秋田駒の最高峰で

秋田県の最高峰、男女岳の堂々たる姿。

左手の赤茶げた山は焼森山だ。

 

笹森山への登りは丸太で補強されているが

雨水や雪などで削られていて

なかなか歩きにくい。

 

登りにくい急登が終われば

木道のおだやかな道。行手には

乳頭山がお出迎えだ。

 

こちら↑見えてくるのが笹森山。

令和6年現在は山頂付近は刈り払われている。

刈り払われていないとその山頂は

いかにも「笹森山」の名に恥じない、

笹だけの山である。

山頂からは男女岳と眼下に田沢湖が近い。

展望がある日は、立ち寄ることをおすすめする。

だがきょうは

行程も長いので体力温存を理由にスルーした。

登っても10分程度の行程ではあるが。

 

9:15、湯森山到着。

広く開けた山頂部に、ベンチや

看板やらが賑やかなものだから

ついここが山頂、と思うのだが

三角点と山頂の標柱はここからちょっと先。

 

こちら登山道の脇にひっそりと

三角点と山頂の標柱がある。

 

湯森山を過ぎればいよいよ薮となる。

薮とはいえ、↑こんなふうに開けた場所もあり

さほど薮こぎのストイックさは感じない。

 

おおむね、こんな感じの薮。

足元が見えないので段差や石ころに

つまづくの鬱陶しい。

 

薮のあとのご褒美。

湿原に差し掛かるととたんに

天国だ。

名前は熊見平でやや物騒だが。

 

そして薮。

薮の下に、朽ちた木道がやっかいだ。

 

9:55。宿岩到着。

湯森山と笊森山のちょうど中間点。

 

宿岩を過ぎると、

もう薮がないかなと思わせて、

やはり薮なのだった。

 

そして薮のあとはやっぱり

ご褒美が待っているのだ。

 

笊森山の登りになると

さすがに吹きっさらしの灌木となって

薮の進出すら厳しい環境。

ガレた登山道は歩きにくいが

足元が見えるだけだいぶいい。

 

10:45、笊森山到着。1540m。

本日の縦走の最高峰だ。

彼らの背後が乳頭山。

 

笊森山から乳頭山は見下ろす形になる。

笊森山は展望がよく、

山頂も広いので風がなければ

のんびりしたくなる長閑な場所だ。

笊森山から千沼ケ原を経て乳頭山へ

だが今日の我々の行程は長い。

笊森山を下り、千沼ケ原へ向かう。

 

こんな山のなかだというのに

クマに齧られていない標柱もめずらしい。

コケまで付くまで無事なことに驚く。

 

ぐんぐん降っていくと

行く手にいくつもの池塘がきらめく

千沼ケ原が見えてくる。

 

笊森山から20分ほど降ればこの景色。

湯森山からの薮のおかげか

人も少なく静かな散策が楽しめる。

 

千沼ケ原から

縦走路へ登り返す。

 

 

登り返しの途中、この程度の小沢を

何回かまたぐ。

本日はどの小沢も枯れていた。

 

15分ほど行けば、

笊森山と乳頭山を結ぶコルに出る。

ここの標柱もだいぶ古いが

クマの干渉がいっさいないようで

みごとなコケを生やしている。

 

乳頭山の直下まではなだらかだ。

眼下に池塘や、こんな池などもある。

 

とはいえ、やはりところどころ

登山道は草が被っているが

ここまでの行程でだいぶ薮なれしてくるので

あまり気にならなくなる。

 

本日最後の登り。

乳頭山山頂へはこんなガレ場となる。

なかなか急ではあるが、さほどの標高差でもない。

 

12:24山頂。見事な柱状節理が

古い火山であることを物語る。

ここも360度の展望に恵まれるが

三角点はない。

山頂部の崩壊がはげしく、

三角点が行方不明になったとのことだ。

以来、設置はされていない。

背後は笊森山だ。

 

乳頭山から蟹場コース

乳頭山からの下りは、

この通り木道が敷かれているのだが

これが結構な斜度なので

雨の日などは転倒注意だ。

 

乳頭山の肩まで下りると

黒湯温泉へ続く一本松コースと

登山道は分岐する。

 

乳頭山から30分ほどで

田代平山荘だ。ここは無人小屋だ。

すぐ小屋の前が池なので、

浄水器があれば水が得られる。

 

モロビの森をぬけ、木道は分岐にさしかかる。

彼らが向かおうと左折したのが

孫六コースだ。

だがきょうは蟹場コースを予定しているので

彼らには戻ってきてもらう。

蟹場コースはこの孫六コース分岐を

まっすぐ進む。

 

途中、このような箇所もある。

丸太の階段の土がえぐれていて

疲れた足を上げて乗り越えるのが

地味にこたえる。

 

だが、やはりご褒美景色が待っている。

田代平と書いてたしろたい、と読む。

 

木道の脇には池塘があって

ミヤマホタルイやミツガシワ、

ワタスゲなどが。

 

しかし山の花といえば

ニッコウキスゲしか知らない彼らは

どんどん先を行くのだった。

 

サワラン。はじめて見てテンション上がる。

こんな派手なショッキングピンクの花、

あるものかと思っていたが

本当に派手なピンクのランだった。

 

湿原を過ぎると、

樹林帯に入っていく。

やや急な登山道は刈り払いされているが

岩や木の根で歩きにくい。

 

ここまで薮を歩いてきた我々の足には

こんな道ももはやあまり気にならない。

 

途中の沢は枯れていた。

 

急斜面が終わるとブナの森となる。

登山道もなだらかで、とても気持ちのいい森だ。

 

14:18、蟹場分岐に到着。

このまままっすぐいくと大白森に行ってしまう。

よほど迷う人がいたのか知らないが

かなり分かりやすく分岐の看板がある。

 

たしかに、現在地の目印を

標柱だけに任せておけない事情がある。

ここが分岐だよといくら

目印にと標柱を立てたところで、

設置するそばから即クマに齧られるのが

この界隈の標柱の運命だ。

 

分岐から先は、地形図で見て分かる通り

やや痩せた尾根となる。

おかげで明るくすっきりとした登山道だ。

 

14:56。

分岐から標準コースタイムで40分で

登山口の大釜温泉に到着だ。

 

登りは少ないとはいえ14キロの

道のりで歩きごたえのある1日だった。

満足である。

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