2014年4月26日 羽後朝日岳へ一泊山行~前編

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羽後朝日岳は、秋田と岩手を結ぶ国道46号線の、
田沢湖にさしかかるあたりから東側に、
大きくなだらかな山容を見ることができる。
県境に尾根を連ねる真昼山地の一角を成し、
和賀岳の山塊と並んで、人が容易に踏み入れられない奥地に座す。
男性的な和賀岳に対し、
羽後朝日岳の稜線は柔らかな丸みを帯びてどこか優しげだ。

本日はその羽後朝日へ、貝沢集落の「高下岳登山口」手前の枝尾根から
残雪を拾って山スキーで入山する。テント一泊の予定。

高下岳登山口とはあるが、そこから高下岳に至るには
沢尻岳、大荒沢岳、根管岳・・といくつかの山頂を縦走しなくてはならず、
どちらかと言えば、沢尻岳や大荒沢岳登山口と記す方がしっくりくる。
が、あいにくこの両峰は、国土地理院の地形図にその名の記載がない。
道路から、その沢尻岳。
林道はまだ雪が残り、
クルマを最終集落を過ぎた、林道入り口付近の広場に停める。
マイクロバスが一台いて、どうやら数人のパーティーが
入山したあとのようだ。
8時15分、本日の足はスキーかツボ足か考えた末
山スキーをかかえて出発。
9時。林道を逸れて、取り付きの尾根へ向かう。
途中で徒渉あり。石を伝って何とか渡れる。
杉林を過ぎて、取り付きへ。見上げる山肌に雪はまばら。
南側を避けて北へ回ると
何とか雪が繋がっている。
途中で見つけたブナの古木。
裏へ回ると、外側だけかろうじて残った幹で命を繋いでいた。
この尾根は南側には杉の植林があるが
尾根上にはナラやブナなどの巨木が残されている。
あちらの尾根は夏道。
思ったより、雪が残っている様子。
こちらのルートは、ときおりピンクテープが下がっているが
雪上にうっすら残るトレースに新しいものはなく、
先行パーティーは夏道を使っているようだ。
尾根に上がる最後の数十メートル。
雪は腐り気味で水気が多く、シールが効きにくい。
時折ずり落ちながらも、ジグを切って慎重につめる。
このコース一番の急登だ。
12時30分。広々とした尾根でランチビール。
あの急登から解放されての一杯は格別だ。
13時19分。休憩のあとはこの尾根をのんびりと行く。
ここから緩く70mほど登れば
夏道との合流点である前山分岐だ。
沢尻岳が見えてくる。
この一帯はクマの生活圏らしく、立派な熊棚や
木登りのあとの爪痕を随所で見ることができる。
13時30分、夏道と合流。前山分岐付近。
ここを過ぎたあたりで、
羽後朝日を登り終えて下山してくるパーティーとすれ違う。
先行者のトレースも明瞭。
新しいピンクテープも。
この先は沢尻岳までなだらかな尾根歩きだ。
時間があれば、畚にもと思ったが今回は行けなかった。
夏道は所々で姿を現しており、
その横にできた雪道を拾って、スキーを進める。
しかし、雪はときおりこのような崩壊を起こしており、
2回ほど、スキーを外して担いで夏道を歩いた。
夏道は、カタクリが見頃。
歩きやすい登山道だが、一泊装備とスキーが重く休み休みの行程となる。
ここでもう1パーティーとすれ違う。
再び雪の崩壊。
雪庇崩壊跡を振り返る。
尾根は徐々に隣の尾根と合流して広くなり
やがて沢尻岳の山頂に向けて集約されていく。
15時30分、沢尻岳から大荒沢岳と
その奥に優美な羽後朝日岳が姿を現した。
重い荷物とスキー歩行に手間取って
前回の沢尻から高下岳縦走の倍以上、時間がかかってしまった。
予定では昼頃には沢尻岳に荷物をデポして
身軽になって羽後朝日ピストン、だったが、
往復で最大4時間と考えると、今日はここでタイムアウト。
沢尻岳山頂直下、登山道から
少し逸れた場所に平坦な場所があったので、本日の宿とする。
ここは最高のロケーションで
テントの入り口からは和賀岳が見える。
北には秋田駒の、外輪山が女岳をぐるりと取り囲む独特な山容が、
午後の霞がかった空に大きい。
もちろん、羽後朝日がよく見えるのは言うまでもなく。
雪を溶かして水を作りながら、この恵まれた展望に幾度となく
見とれてしまった。
まだ日は高いが、ビールが飲みたく、宴会準備完了。
この季節はビールを冷やすのに悩まなくて良いのが、ありがたい。
里で採って来たバッケで、バッケ味噌を作り
このために持って来た純米酒を開ける。
最後はマッカラン。バッケ味噌にも思いがけず合う。
テントから首を出すと、夕日が羽後朝日と大荒沢のコルに
沈もうとしていた。
風が少し出て来たが、冷え込みも弱く
穏やかな春山の宵である。

翌日へ

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