南本内岳は、焼石岳のすぐ北に位置する1492mの、どちらかといえば
マイナーな峰だ。焼石岳山頂から30分ほどで立ち寄ることができるので、
この頂を目指して訪れる、というよりはむしろ
焼石岳のついでに立ち寄るという登山者が多いかと思う。
そんな脇役的な山であるが、
岩手県の西和賀に南本内岳の登山コースがあることを知り、
興味を持って4、5年程前に目指したことがある。
あいにく、登山口に至る約15kmの林道が
入って数キロの地点で通行止めとなっていて、がっかりして引き返した。
その後も、西和賀のホームページをチェックするも
大雨などのあとはこの林道がしょっちゅう通行止めである。
今年、たまたま予定していた山行がキャンセルとなったので
南本内岳を検索してみると、林道は通行可能となっており、さらには
数日前が山開きだったようだ。これは林道、登山道ともに
コンディションは最高だろう、ということでいそいそと出かけた次第。
=======コースタイム========
登り=3時間 / 下り=2時間
07:55 登山口
09:08 新倉沢分岐
09:21 ブナ清水(水場)
09:47 お花畑入り口(尾根コースとの分岐)
11:00 南本内岳山頂(休憩)~11:30
12:14 お花畑分岐
13:30 登山口
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現在、災害で通行止めとなっている国道107号線から、
錦秋湖ダムにかかる天ガ瀬橋を渡り、
高速道路脇をかすめて、かの林道に入る。
林道はところどころ、路肩崩れ注意のリボンがあるものの
おおむね問題なく、登山口まで繋がっていた。
7時30分過ぎ、駐車スペースに到着。路肩がやや広くなった程度の
駐車スペースと、この上にも車を停められるスペースがある。
先行者の車は一台。すでに出発した様子。身支度していると
もう一台来て、どうやらこの山域をパトロールする地元の案内人の方。
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7時55分、蚊取り線香をぶら下げて出発。
登山者名簿の箱の中には、
西和賀の山々のとても分かりやすいガイドマップがある。
しばらくは、なだらかな杉の造林地を、
咲き始めた矢車草の花を左右に見ながら進む。
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まもなく沢を渡れば、杉林はブナの森に変わっていき、
徐々に、登山道には傾斜が出てくる。
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地元の標識の「一」。ここらから尾根筋の、本格的な登りとなる。
風もなくじっとりと汗がにじんでくる。
先行のグループに追いついてしまい、どうぞと路を譲られた。
譲られたものの、しょっちゅう写真ばかり撮っての山行なので
またすぐ追い越されそうである。
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尾根の山腹を巻くようにつけられた登山道に、
年季の入った大きなブナがあり、その割れた幹の途中に
ヤシャビシャクという、希少な植物があると教えられた。
遠くて、よく見えないのが残念。
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8時26分、標識「二」。
登山道は痩せた尾根道となり、ささやかながらも風が通って爽やかだ。
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痩せ尾根には、五葉松など、松の類いが元気がいい。
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細かな松の葉が堆積する登山道は、とても歩きやすい。
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歩きやすいのもそのはずで、倒木などはほぼ処理されているのだ。
切り口などは、新しいものも多くおそらく
山開きに合わせて、丁寧に登山道が整備されたのだろう。
写真の丸いプレートには、
「新倉沢まであと5分」と手書きで書かれている。
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本日、ギンリョウソウが多かった。
地味であるが、気がつけばギンリョウソウ街道となっていた。
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9時5分、新倉沢。石伝いに難なく渡れた。
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沢の対岸には本日初のハクサンチドリがお出迎え。
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新倉沢からやや急な登山道を20mばかり登ると
尾根コースとの分岐がある。
今日は、行きをこの尾根コースを使って8の字ルートを
目論んでいたのだが、
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国土地理院の地形図には記載のある登山道の方向を見ると、
意味深に木の枝が置かれている。
跨いでその先を覗いてみると、草がみっちり。
木の枝はこの先通行不可のサイン。よく見ればその脇にある標柱に、
登山コースを示すプレートが剥がされていた。
どうやら廃道となって久しいようだ。
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大人しく、お花畑コースを辿る。
こちらは、本当にすばらしく手入れされて
いる。
いる。
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湿地の木道脇に、今年初モノのサワモタシ。
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9時21分、ブナ清水到着。
プレートには「水質は保証しない」旨の記載があったが、
キンとした冷え具合にたまらず、一杯。
しぼり取られた汗の分、細胞に染み渡るおいしさだ。
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9時25分、水場からすぐの場所に苔むした岩を洗って流れる沢。
CMにでも出てきそうに涼しく気持ちのいい場所。
休憩するにはちょうどいい。
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登山道脇にはモミジカラマツ、カラマツソウが咲き始めていて見頃。
ほかにもハリブキ、コヨウラクツツジなども。
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樹木の背が少し低くなり、足元にイワカガミなども現れてくる。
登山道は、ごらんの通り、要所要所で階段が作られている。
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そして、これ!えぐれた登山道の横の斜面のステップに、
足一個分の滑り止めが施されていた。
おかげで、不安無く通過できる。
西和賀の心遣いの細やかさには感動してしまう。
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9時47分、尾根コースとお花畑コースの分岐。
本日は、お花畑コースから登り、尾根コースを下ってくることにする。
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イワイチョウが咲く湿原へ。
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伸びやかな湿原。脚がなかなか進まない。
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ミツガシワが見頃。
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シナノキンバイも。
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コバイケイソウと、シナノキンバイ、ミツガシワ、
ハクサンチドリなどの群落をのんびりと歩く。
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この湿原を越えて少し行けば、またお花畑があるらしい。
駐車場で会った地元のパトロールの方から教えてもらう。
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見事な花畑に誘われながら、緩やかに高度を上げていく。
振り返ると、さきほどの湿原と池塘。
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間もなく、教えられた湿原に到着。さらに広く、雪渓もある。
小川も流れ、焼石岳の焼石沼付近に似た雰囲気だ。
ひんやりとした空気に汗が引く。
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お花畑を過ぎると、いよいよ最後の登りだ。
高度が上がると、西に三界山が見えてくる。奥には大森山。
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ハクサンシャクナゲが、ちょうど見頃だった。
私はいつもボロボロになった頃合いしか見たことがなかったので、
この咲いたばかりの新品を見たのは、今回が初。
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尾根に上がると、ウスユキソウの類いも登場。
う~ん、ミネウスユキソウかな。
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カエルも登場。
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10時57分、焼石岳からのコースとの分岐。
山頂はすぐそこ。
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11時、山頂。
ちょうど先月の今頃もここにいた。
あちらは焼石岳。入れ替わり立ち替わりのように
数人のグループが山頂に立つのが見える。賑わっていそうだ。
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先月は山頂付近はチングルマが見頃だったが、
本日は数輪残して、産毛状態に。
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他のグループもまだまだ到着しそうにないので、
山頂を独占してランチタイム。途中で採ってきたタケノコと
乾燥わかめを入れて、豪華カップラーメン。
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11時30分。グループの声も近づいてきたので、そろそろ店じまい。
山頂を明け渡して下山に取りかかる。下山には尾根コースを使う。
こちらの道も刈り払われたばかりのようで、とても歩きやすかった。
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コメツツジ。1センチにも満たないような小さいツツジだ。
5年前に、羽後朝日で見て以来の再会。
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パトロールの方に教えてもらったハクサンシャクナゲの大きな木。
見頃。痛んでいないハクサンシャクナゲも初めてなら、
こんな見上げるようなハクサンシャクナゲも初めてだ。
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アカミノイヌツゲ。赤い実が着くイヌツゲ。雌花。
大きさは3~4ミリぐらいのちっさな花。
登山道脇にたくさんあって、イヌツゲロードとなっていたが
果たしてこの花盛りに気づく人がどれほどいるか。
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尾根コースも、素晴らしく整備が行き届いて歩きやすい。
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振り返ると、南本内岳山頂に、今朝追い越したグループが立つのが見えた。
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伸びやかな尾根歩きが終わると、
眼下の湿原目指して、ぐんぐん標高を下げていく。
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当初、8の字ルートを取ろうとして廃道となっていたコースは
あの目の前の山の山腹を巻いて鞍部に上がり、
そしてこちらのこのコースと合流する。
途中、その合流ポイントらしき標柱があったが、道らしき形跡は
薮に覆われて見つけられなかった。
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12時12分、池塘のある湿原に飛び出る。
お花畑分岐はここからすぐだ。
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今朝は気づかなかったが、お花畑分岐付近にオオバタケシマラン。
葉っぱの下に隠れるようにして花が着くので
なかなかその存在に気がつかない。
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あとは今朝と同じ道を辿って登山口へ。
ヤグルマソウのゴージャスな花の街道を抜け、
13時30分に登山口到着。
出発時には3台だった車はさらに増えていた。
マイナーな山だと思っていたが、知る人ぞ知る穴場的な山として
人気があるようだ。
大雨のあとなどは、林道は崩壊しやすいのでご注意を。
天気が大きく崩れそうなときや、大雨の後は林道の状態を確認してから
入山するのが安心。
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下山後温泉は、温泉地なので選び放題だ。
穴ゆっこ、砂ゆっこなどユニークなものもあるが、
本日はほっとゆだ駅の温泉、300円。
温泉のあとは、向いにある湯夢プラザの食堂で蕎麦。
写真は十割そばの大ざる。二人前ぐらいある。
西和賀は、他にも真昼岳や高下岳から和賀岳、
女神山などの登山コースを持つ。
ホームページに林道情報がこまめに更新されてアップされているので
チェックしてから出かけるのがおすすめ。
下山後はぜひ、温泉とおいしい蕎麦、
そして湯田牛乳で作るソフトクリームを!そして時間があれば
貯砂ダムで涼むのも良い思い出になるでしょう。
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