標高1439.4m。
和賀岳は標高こそ平凡ではあるが、その姿を里から探せば、
奥羽の山並みのその奥に、なだらかな稜線をゆったりと従えて
ただ一人悠然として起立している。
あたかも孤高の気高さを備えているようで、私の心を捕える。
が、いかんせんその頂は遠い。憧れる気持ちばかりで
なかなか登る機会に恵まれずにいたが、
今回、5年ぶりに甘露水からその頂に立つことができた。
◯コースタイム(休憩込み)ーーーーーーーーーーーーーーーーー
7:17 駐車場スタート
7:25 甘露水で水補給
7:30 入山
8:49 倉方
9:35 薬師岳
10:24 小杉分岐
10:47 小鷲倉
11:28 和賀岳
12:25 下山開始
15:17 甘露水登山口
今回は矢留山岳会の会山行。私が担当だ。
和賀岳フェロモンに誘われて、ノーマル登山にもかかわらず
比較的参加者が多い山行となった。
7時17分、駐車場から林道スタート。
本日はこの山域には珍しく入山者が多め。
我々の他に2~3パーティと単独者2名。
林道を10分ほど歩けば、甘露水登山口。
一昨年、甘露水手前の林道の一部が土砂で崩壊していたが
きれいに修復されていた。
最初こそ、うっそうとした杉林だが間もなく、柔らかな新緑の森になる。
斜度を増した山腹を、登山道は
九十九折りなってにじわじわと標高を上げていく。
清涼な朝の空気であるが、早くも汗がにじむ。
ブナ台を7時48分に通過。
まもなく現れるのは、プレートを飲み込みつつあるブナの大木。
こちらは2005年の写真。10年でブの字も見えなくなった。
8時7分、滝倉手前の徒渉点。
第一段階の急登がこのへんで一旦終了。ここから第二段階の急登りとなる。
急登の大仕事の前に、せっかくなので荷物を下ろして、
顔を沢水で洗う。ひんやりと気持ちよく汗が引く。
滝倉から足元に遠ざかる沢音を聞きながら尾根を登り、
まもなく、開けた場所に差し掛かる。
ここが避難小屋跡。だいぶ、草木が繁っていて標柱も
いつからか寝転んだままで、起こされる様子もない。
8時49分、倉方。このコースの急登が終了。
倉方から少し登れば展望が開ける。
が、途中の登山道は所々、笹が濃い。が、道を見失うほどではない。
9時7分、稜線に飛び出る。樹林帯から解放され顔を上げれば、
甲から彼方に真昼岳、女神山へと魅力的な稜線が伸びる。
そして、足元にはニッコウキスゲ。
まろやかな薬師岳の山頂も見えて来た。
ハクサンチドリとウラジロヨウラクのツーショット。
ゴゼンタチバナ。お気に入り。
9時28分、甲方面への縦走路のと分岐。
あちら方面への登山道は、草が被っていたが
覗くと草の下には踏み跡が明瞭に確認できた。
甲、大甲、風鞍、青シカと越えて彼方に真昼岳と女神山。
一気にこの稜線を歩けたら面白いだろうなと考えながら
しばし眺めて過ごす。
分岐を過ぎればやっと和賀岳の姿が現れる。
悠然として実にかっこいい。
標高1218mの薬師岳のの山頂まであと一息。
笹とわずかな低木の、こざっぱりとした景色だ。
9時35分、薬師岳山頂。薬師さんにお参りして、その奥の山頂で小休止。
何人かが縦走路と間違えて迷い込んで来たが、
和賀方面への登山道はこのお社の、下にある。
さて、薬師岳でようやく本日のコースの半分。
ここから、急な登りこそないが、アップダウンの長い道のりとなる。
目指す和賀岳は、まだまだ遠い。
しかし、広
く伸びやかな稜線にはニッコウキスゲがほころびはじめ、
く伸びやかな稜線にはニッコウキスゲがほころびはじめ、
初夏の訪れに心は踊る。
薬師平。雪溶けが遅い場所のせいか、
まだ春の花が残っている。
薬師平の特別に色の濃いイワカガミ。
本日、天気予報によれば午後から大気の状態が不安定になるらしい。
ひとまず、小杉分岐まで行って空の顔色を伺おうと考えていたが
今の所、快晴。そして順調なペース。問題はなさそうだ。
10時24分、小杉分岐到着。ここは白岩岳への縦走路との分岐点だ。
和賀岳は、この先ふたつのピークの奥に見える。
だらだらとした登りで100mほどの標高を稼ぐと
10時47分、小鷲倉。
このピークを過ぎれば、あとは心が折れそうな登りはない。
和賀岳のピークに人影も見える。あと一息だ。
和賀岳の山頂直下には、チングルマのお花畑が広がっていた。
ぎらっとしたニッコウキスゲもいいが
チングルマがちりばめられた草原にも、やっぱり乙女心はときめく。
11時28分、山頂!
5年ぶりだ。
一等三角点だけあって、展望はぐるりと! ここ数年は、
あちらの羽後朝日界隈から、和賀岳を眺める山行が多かった。
辿ってきた小杉、小鷲倉と続く稜線。
さて、お昼。最近のメニューはトマトと寿司太郎おにぎり。
酢飯はクエン酸のチカラで、疲れにも効きそうに思えて。
何より、山中で小食な私でも食がすすむ。
登って、食べて、満足したので寝る。
背中に感じる和賀岳と、真上にはいつもより近い空。
体が和賀岳と空に溶け込んでしまいそうで、気持ちがいい。
12時25分、のんびり1時間近くもくつろいで下山開始。
見渡せば、入道雲が増えて来た。
下山で見つけたコバイケイソウ。
初夏の好天に誘われて、午前中よりも花が増えた気がする。
午後になり日差しが高くなると、気温が上がり雲はむくむくと成長しはじめる。
楽しい稜線歩きから、再び樹林帯に入ると森の中は
少しひんやりと涼しくてほっとした。
木漏れ日のブナの森を楽しみ、15時17分には甘露水登山口に到着。
駐車場に着いた頃、遠くに雷鳴が聞こえてきた。
奥羽山荘で気持ちよく汗を流して帰路に着くと間もなく、
あれほど晴れていた空はどこへやら、雨が降り出した。
何と言うタイミング!
追記:
車高145mmのインプレッサでも、甘露水までの林道は問題なく
通れました。
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