樹氷モンスターを見に来る人は
多いものの、その「中の人」を
目当てに山に登ってくる人はあまりいない。
樹氷モンスターの中の人はこちら、
オオシラビソだ。別名アオモリトドマツ。
さらに別名、モロビ。
乾燥に弱いので、日本海側の多雪地帯、
とくになだらかな地形の山に森を作る。
森吉山や蔵王、八幡平、乳頭山界隈など。
中の人。
わたしはこのオオシラビソの香りが
大好きで、八幡平などはもう全域がこの
香りで満ちているので、過呼吸になりそうなほど
嗅いでしまうのだ。
これは森林浴で効果的と言われるフィトンチッド。
八幡平はオオシラビソの密度が
日本トップクラスとも言われるようで
なるほど森林セラピーロードが成立するわけだ。
むかしはこの香りに魔除け効果があるとも
信じられていたようで、森吉山麓では
朝夕の浄め火に使われていたそうだ。
蒸ノ湯から入るコースがその
森林セラピーコース。
標高が低いうちは、ブナなどが混じる森で
オオシラビソの樹高もかなり高い。
標高1000mを過ぎるとだんだん、
ブナは姿を消して、代わりに
オオシラビソにときおりコメツガが
混じる森林となってくる。
そしてオオシラビソの樹高はだんだん
低くなる。
これがオオシラビソの雌花の球果。
つまり松ぼっくり。
よく見るマツボックリみたいに
その先が開かないで、閉じたまま。
サイズにして10センチほどだ。
オオシラビソの名前の由来は
同じ針葉樹で太平洋側に多いシラビソに
似ているからなのだが、
この球果が大きいのでオオシラビソと
名付けられたとのこと。
ちなみに雄花はこの枝に下向きに、
雌花とはタイミングをずらして咲く。
タイミングをずらすことで自家受粉を
避けている。
たまたま八幡平の遊歩道で、
オオシラビソの倒木があって球果を
間近で見ることができた。
この実はホシガラスの好物なのだそうで、
このように、きれいに食べられる。
ホシガラスのほかにもリスも
食べるようだ。
これだけ大きければ、さぞかし
食べ応えがあるだろう。
このオオシラビソの森。氷河期が終わった
一万年ほど前から広がりはじめ、
ここまでの大森林を
形成するようになったのはごく最近の
ことらしく八甲田などでは
600年前にようやく樹林帯が
できたのだそうだ。
暑い日が続きますね。涼しいモンスターで
残暑見舞い。
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