初冬の姫神山へ一本松コース往復

初冬の姫神山へ一本松コース往復

冬型の気圧配置がぼちぼち出てくると、我が秋田県はどんよりとした空が続く。

スカッと気前のいい青空が見たくなったら、われわれ秋田県人は奥羽山脈の向こう、お隣の岩手県へと車を走らせるのだ。

冬山への体ならしも兼ねて、姫神山へやってきた。

実に9年ぶり。そして一本杉コースを登るのは19年ぶりのことである。

足が遠のいていたのは、9年前のアプローチのときの、盛岡市ならではのブラックアイスバーンがあまりに怖かったためである。

19年ぶりの一本杉コースへ、横手からだとサクッと高速を使って1時間ちょい。

 

道すがら姫神山の端正な三角形がよく見える。

岩手山、早池峰山、そして姫神山には三角関係の恋バナ伝説などもある。

その伝説というのは、岩手山と姫神山は夫婦なのだが、岩手山は早池峰山に惚れてしまい正妻である姫神山を疎ましく思い追放を企てるというものである。

その伝説を聞いた時は、あんな端正な姫神山を疎ましく思うなんて、と岩手山の気持ちが測りかねたものだ。

しかしながらこうして車から眺めてみれば、こじんまりと端正な山容は美しいことには美しいが、かたや早池峰山のボリューミーな姿に比べればやや物足りない。のかも。

登山対象としてこの二座を比較しても、山屋目線的にも早池峰山のほうが俄然やる気が出る割合は高いだろう。

なるほどな岩手山。

そんなことを考えながら、癒し系女子的な姫神山へ向かう。

 

ログはこちらYAMAPで。

一本杉コース登山口

8時44分、一本杉コース登山口となるキャンプ場駐車場到着。

駐車場はキャンプ場もあるためとっても広い。

紅葉シーズンもとうに過ぎた今日、閑散とした駐車場にはそれでもポツポツと登山者の姿。

 

トイレ。

ひたすら車を走らせてきた。

休まずに。

だからシャッターが下ろされたトイレが見えた時は軽く絶望した。

 

しかし、よくみればこのシャッターは凍結防止のためのよう。

完全に閉鎖されるのは12月、つまり明日からとのこと。

なんだ。

てっきりクマ避けで下ろしてくれと書かれていると思ったら。

ということで、トイレは12月から3月いっぱいまで閉鎖。

いろんな意味でぎりぎり間に合ってよかった。

 

樹林帯を八合目へ

9時、スタート。

しばらくキャンプ場内の広場をゆるく登る。

盛岡の冷え込みはさすがで、足元には霜柱。

 

5分も歩けば、いよいよ登山口。

いろいろ気をつけなければならないようで、情報多い。

熊の看板は誰の仕業か欠けていて、おりしも緊張を醸すのによい効果を発揮しているように思えた。

 

わたしは岩手の山火事注意看板のファンである。

姫神山の山火事注意ではお馴染みのリスの火消しではなく、カチカチ山がモチーフとなっていた。

その流れのせいか、必死なタヌキにたいして満面の笑みのウサギの顔の対比がこの看板の見どころだ。

 

しばらく杉林だ。

一本杉って名前なんなん?

心中つっこみながら登る。

すると。

 

一本杉の看板が。

そちらを見ると。

 

でか。

際立って大きい杉。

一本杉コースというより、

一本(だけでかい)杉コースだ。

 

杉に突っ込みながら進むと「精英樹」の看板がでてきた。

姫神の杉は立派なものが育つため、この子供苗が東北地方の森林造成に貢献しているとのこと。

杉界のエリート軍団だ。

 

一本杉のそばに湧水がある。

以前は清水として看板があったような気がしたが、今はなんだか様子が違う。

降格したのだろうか。

 

杉エリート林を抜けると斜度がやや増す。

ざんげ坂。

 

落葉の森の中、ざんげ坂の木の階段がどこまでも続く。

 

気温は2、3度ぐらいだろうか。

霜柱がずっとある。

 

9時42分、五合目。

地形図で730のポイントが打たれている尾根の途中だ。

ここで尾根にあがる。

広い場所なので休憩にちょうどいい。

 

尾根上の登山道をゆるく進んで六合目。

前方にわちゃわちゃと岩が積み重なっている。

 

六合目付近から、岩がこのようにわちゃつきはじめる。

 

標高的には、日本海側ならばブナが優勢になるころだが、ミズナラなどの混成林が続くところに太平洋側であることを感じる。

 

座りやすそうな平たい岩が目立ち始める。

 

はしごだ。

しかし登山道はこのはしごを迂回しているのだった。

 

10時8分、八合目。

ここから岩手山がよく見える。

入山者はぽつりぽつりといて、ほとんどがソロである。

そしてなぜかラジオ鳴らし率が高い。

盛岡ルールなのだろうか。

 

寝そべっても余るほどの大きな岩。

登山道は全体的に緩やか。

整備も行き届き、なによりゴミひとつ見当たらない。

岩手の山への愛が感じられる。

 

両脇が笹薮に。

熊鈴を鳴らしておこう。

こんなご時世だというのに、あまりにうららかな日和りのせいかすっかりクマの件は忘れてたわ。

 

板状の岩が折り重なる。

 

ミルフィーユ。

特徴的な岩にその成り立ちが気になってくる。

姫神山は古い火山の一部のようで、早池峰山と同じように残丘なのだそうだ。

岩手山とは夫婦という伝説があるが、どうやらかなりの姉さん女房のようだ。

 

岩が折り重なる道には、頂上までのカウントが始まった。

何合目表記は見当たらない。

 

この岩をちょこっとボルダリングして超えていく。

ルートは向かって左側だが、右側にまわると展望があった。

 

ずいぶん標高があがった。

姫神山を登る理由のひとつが目の前に美しい。

 

正規ルートに戻る。

古い岩は苔むして、さらにシダに覆われユニークな佇まい。

 

ハシゴが出てきて、そろそろ山頂も近い。

 

手前に祠。

 

直下に薬師神社。

剣が出てくると岩手の山だなと思う。

秋田ではあまり剣は置かれていない。

 

祠の周辺のかわいい苔。

標高的にはフジノマンネングサかな。

 

きょうは苔もフローズンだ。

 

11時、山頂。

山頂は花崗岩が露出し、1000mを少し越える標高にもかかわらず展望がよい。

 

姫大明神を祀る祠。

登ってくる地元の方々が、展望よりも真っ先にこの祠に手を合わせる姿が印象的だった。

 

巨石群とともに岩手山を堪能。

気温は低いが風もなく日差しに恵まれ、居心地のよい山頂だ。

 

昼には早いが、せっかくなのでラーメンランチ。

ついでにドリップコーヒーと羊羹を味わう。

 

馴染みのない景色は、どれが何の山なのかさっぱりだ。

 

盛岡方面には、紫波三山。

東根山、南昌山、赤林山が目立つ。

というか、それしか分からない。

その奥に、男助山、真昼山地も。

 

のんびりしたので、往路を下山。

後から地形図を見たら、山頂から北に伸びるコワ坂コースがあった。

これを下山に使えば、車道を20分ほどで登山口に戻れるようだ。

 

のびのびとしたミズナラ。

 

暴れん坊のミズナラ。

 

そんな木々の向こうには岩手山。

落葉シーズンならではの景色を楽しむ。

 

下山してくると、山頂で会った男性が登ってきた。

2回登るのだそうだ。

なるほど、地元ならではの姫神山おかわり登山だ。

 

キャンプ場に降りる手前で分岐があり、洗い場とある。

そちらへ行けば湧水があって、靴を洗える。

そのそばには、杖が備えてある。

 

13:30、キャンプ場。

場内では焚き火を楽しむキャンパーもいて長閑な冬の午後。

 

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