ブナの林の林床の定番といえば
クマザサやチシマザサ。
道に迷えば、藪こぎの対象だが
たいていは、
タケノコ採りで楽しませてくれる、
恵みの植物。

ササはもともとは中国の竹がルーツ。
竹が多雪の日本で独自の進化をとげて
現在のササになったという。

つまりササは日本の固有種だ。

そのササにも花が咲く。
あまり見かけることもないのだが
それは地味だから、というだけではなく、
咲くまでの長い年月によるものの方が
大きいのかも。

ササが花を咲かせるのは、一度きり。
それも60年から100年以上に一度だけ。
花の見た目に、華やかさはないものの
ロマンを感じさせる時間スケールだ。

そして咲く時は、その一帯のササが
いっせいに開花する。
仮に、
ササの花がたとえばユキツバキのような
華やかなものだったら
さぞかし豪勢な景観になるだろう。

だが上の写真のように
いたって地味だから
ササにとっては一世一代の開花でも
気づかれないことが多い。

だが咲いた後はすぐわかる。
ササは花を咲かせ、結実させたあとは
その一帯すべてのササが枯死するのだ。

これは岩手県の赤林山の
登山道脇を2015年に歩いた時の
ササの枯死した様子。

新緑で明るい森のその林床では
行けども行けども、枯れたササ。

二合目過ぎから、三合目、四合目までの
一帯がこのような状態。
ときにはその山すべての
ササが枯死することもあるらしい。

ササの開花や枯死は、その環境には左右されないという。
というのも、海外のタケのタネを持ち帰り
栽培したところ、数十年後に花が咲き、
そして同じ時期に、海外の同じ株のタネの
タケも開花し枯死したという報告がある。

ササやタケの開花や枯死は
遺伝子レベルで決まっているのではないかと
言われている。

ところで、花が咲くからには実もつける。
ササの実は花以上に馴染みがないが、
それはでんぷん質が多いらしい。
だがとても落ちやすいので、
見るタイミングが難しい。

戦後の食糧難が深刻だったころ、
日本の至る所でササの開花があったと
記録があるようだ。
人々は山に入り、でんぷん質の多いその
ササの実を収穫し、
命をつなぐことができたという。

遺伝子に刻まれたプログラムのままに
開花し結実した結果なのだろうが
山と日本人との神秘的なつながりを
思わずにはいられない。