
森吉山の東、赤水渓谷を経て初めて九階の滝を
「展望台」から眺めたのは2008年の秋のこと。
はるか眼下に、落差150m近い大きく
優雅な滝が広がっていた。
そこは森吉の秘境中の秘境。
地形図には名前さえ記されておらず、
登山者の目に触れるようになったのは最近のこと。
ましてやその下部まで降り立ち、間近で仰ぎ見ることは
ごく一部の人間にしか許されない領域だった。
この滝を求めて多くの遭難者が出ており
中には未だに戻らない人もいる。
そういう背景もあり、
ブログにアップするのはどうしようかとも
躊躇したが、すでにちらほらと記事があり
またテレビや雑誌でも取り上げられているので
いいか、と判断した。

本日、九階の滝の下部まで下降する。
早朝4時30に横手を出発し
森吉山野生鳥獣センターそばの車止めから
7時50分にスタート。

大きく立派なトイレ小屋を回ると、ブナの森。
早朝のグリーンシャワーを浴びながら
沢にかかる橋を渡る。
雪の重みで大きくたわんだ橋は、たもとに
「ひとりずつ急いで渡ってください」とのこと。
団体が知らずにいっぺんに通ったらひとたまりもなさそうで、怖い。

早朝のブナの森は凛として清々しい。

木道の両脇の植物は一様に泥を被っていた。
どうやら数日前の大雨のとき、
この一帯を相当な水が流れたようだ。

8時35分、赤水沢分岐。
まっすぐ行けば桃洞の滝。本日は赤水渓谷玉川縦走コース方面へ。
ここでスパイクなが靴に履き替える。

ナメ床の沢を横切って対岸に着くと、
おいしい水場がある。
岩清水で、やさしい味だ。

いったん、沢からあがる。
樹の根がうねる、ほぼ平坦な道を
左に沢を見ながら10分ほど進む。

やがて道は白い砂地に出て、ここから沢歩き。

早い時間だからか、物好きが少ないからか
誰もおらず静か。

コアニチドリが終盤ながらも、可憐に岩肌に咲いていた。

イワショウブもひょろりと登場。

こちら水場。沢沿いの岩から流れ出ている。
このコースはあちらこちらに湧き水がある。
歩いている沢底からもよく見れば、水が湧き出ている。

広い!ゴーロ歩きもなく視界は広く
快適そのもの。

期間限定のナメ滝?

ときどき落とし穴などもある。
ひとまたぎで越えて行く。

岩の一面をキンコウカの群落が
縁取っていた。夏だ。

階段状のミニ滝。甌穴の滝。

その滝を左から越えて行く。

甌穴。ドボンしたくないけれど
はまるのも楽しそう。

9時28分。赤水沢分岐から一時間弱。
左側に枝沢がありここから、九階の滝方面へ分け入って行く。
地形図で言えば、ピーク799.2mの方向。
4年前はなかった赤テープが下がっていた。

一休みし、ハーネスを装着し
ヘルメットを被って身支度を終えたら出発。

最初の難所。
ナメ滝の右側にザイルを張って越える。
久々に八の字結びをして、トップロープで。
ところで、なんとこんなところに
トラロープがフィクスしてあった。
よく見ればそのロープにはほころびも出来ている。
トラロープは登攀に耐えられるようには出来ていない。
また、ザイルも持たない装備不十分な人が、
ロープがあるからと
登って来たらどうするつもりだろう。。。

登りきったところで沢を辿るのだが、
倒木と崩れた土砂で埋まっていて
これらを踏んで進む。

きれいなナメ床が現れる。
脇のブッシュに捕まりながらひょいと越える。

まもなく沢から尾根に上がる。
なんと、きれいに刈り払われていて
踏み跡どころか、立派な登山道が出来ていたのには
驚いてしまった。
4年前は薮をかき分けたものだが、やや興覚め。。。
今日はがっつり薮こぎのつもりで
張り切ってたのに。

10時10分、稜線に出て間もなく目印の大川ブナ到着。
ここからは九階の滝は見えない。先へ少し行くと
展望場所があり、滝の上部がよく見える。

本日はここから滝の下部に向けて
急斜面を下降していく。行きが下りという、いつもの山歩きの逆だ。
ところで、
なんと、この下降ポイントにも
トラロープがあったのには呆れてしまった。
装備も持たないような初心者が、この先へ行ってしまったら
どうするつもりなのか。

トラロープに唖然としながらも、気を取り直して
我が道を降下する。
ここはザイルなしで、ブッシュを利用して降りて行く。

ほどなく仲良し三本ブナ。

途中「正常ルート」からそれた尾根筋方向へ
赤テープと刈り払ったルートが伸びていたが、
我々は正規のルートへ。
降りた沢を進むと、緑のトンネルの向こうで
急に足下がなくなる。

沢は急に切れ落ちて滝となっており、
脚がすくむ。怖いけど楽しいポイント。

この滝は直接降下せずに、その脇、左側の
ブッシュから降りる。

樹に支点を取って、降りる。
師匠は肩がらみでサクサク降りて行く。
「ちょっとハングあるからね~」とのこと。
楽しそう。

肩がらみは苦手なので、私はエイト環で懸垂下降。

降りてきたところを振り仰ぐ。
まだまだ下降は続く。

足下にはショウキランが。

支点を取って
さらにブッシュの中をザイルで下降。

降りたところを振り返る。

横を見ると巻いた滝がある。

ここを降りると最初の下降が終わる。
30mザイルでちょうど。
このブッシュの下は岩となっている。

雪渓が残る沢に降り立つ。
ザイルはこのまま張っておいて登り返しに
回収する。
ふと振り返ると、我々が降り立った地点の脇の
崖の上に、さきほど「正規ルート」と分岐したルートの
出口らしき赤テープと、
フィクスされたトラロープが下がっていた。

雪渓が残る沢。
ここから様ノ沢との二俣をめざす。

わーい。
雪渓をくぐるのはこれが初めて。
(続くのだ)
Author:ばりこ 投稿一覧
こんにちは、ばりこです。
秋田県を中心に登山をはじめて二十ウン年。
2019年より登山ガイドとして
秋田の山々をご案内しております。
また気軽に登ることができるような
低山や里山もお気に入りです。
2022年から地元の里山を
りんご三山と命名。この山にちなんで
りんご三山友の会を設立しました。
山に親しんでもらえる活動をしております。
(公社)日本山岳ガイド協会認定登山ガイドSt.Ⅱ
著書:ばりこの秋田の山無茶修行
連載:SASSOUオンナの山みち
登山ガイドはもちろん、登山教室、地図読み教室なども開催しています!




[…] 前編はコチラ 雪渓の回りには早春の花、キクザキイチゲが咲いたばかり。 まさか7月に見られるとは! 他にもバッケやゼンマイも出たばかり。 下降してきた方面を振り返る。 九階の滝までは、稜線から170mほど降りるのだ。 ここで100mは下ったろうか。 目印の大岩。沢の岸にそそり立つ岩壁から 転がり落ちてきたらしい。 今日は天気の割には涼しい日だが、 それでも雪渓から流れてくる冷気が気持ちいい。 途中、唯一、九階の滝の上部が見える場所。 下部からは見えない部分だ。 前方の壁の下が二俣。 険しい地形に、本日の先行トレース。 チョッパーじゃないよ。カモシカだよ。 11時13分。滝が現れて二本目のザイルを出す。 くどいようですが、ここにもご丁寧にトラロープがしっかりと固定。 こんな場所にトラロープ頼りにのこのこ来る輩がいるのだろうか。 設置した人の感覚が理解できない。 滝の横のブッシュに支点をとって、本日最後の懸垂下降。 隊長は肩がらみ。 ブッシュを抜けて一旦、滝の階段に降り立ち、 その後、沢へさらに懸垂下降で着地。 倒木や流木が多い沢をしばし歩く。 間もなく最後の滝。 脇のブッシュに掴まりながら下りて行く。 一段目を下りて振り返る。 小人が修行できそうな小さな滝、発見。 こちらも下って行く。 バンドに降り立つと そこにはカエル師匠が待っていた。 カエル師匠の真剣な眼差しに誘われて、 せっかくなので三点支持を教えてもらう。 ありがとう。カエル師匠。 ここが師匠のテリトリーの滝らしい。 11時34分、丸い釜に注ぐ滝。 と、その奥に見えるは! ついに到着!11時36分。 九階の滝の下部。 でかいです! なのに、たおやかです。 岳人にここを、ハーケンなどで傷つけることなく 登った記録があったが、このつるつるの のっぺらぼうのどこを、どうやって登ったのか。 逆さ九階の滝。 ここからは、滝の全容は見ることはできない。 見えているのは九階の滝の一部で、まだ先に続いている。 ひとしきり、滝を眺めたら お腹もすいたし、雪渓に刺して来たノンアルビールも 呼んでいるので、引き返すとしますか。 雪渓トンネルの中は寒いくらい。 しかも雫が冷たい。 さて、一気にここから100m近くを登るのだが、 あちらのトラロープが設置された場所が どんなことになっているのかも気になる。 というわけで、ザイル回収班と、 トラロープルートリサーチ班に別れる。 あのポイントまでも結構な斜度だが、登れないこともない なぜ、あんな高い中途半端な場所で トラロープを止めたんだろう。 不審に思いながら登る。あとでその理由が分かったが。。。 フリーで下るには厳しいが、 登る分には樹の根をホールドにして 何とか登れる。トラロープは新品。 尾根に上がると、道は刈り払われており 赤テープが行く手を案内する。 左手には白い岩肌が、梢の奥にまぶしい。 大木があって、確かこのあたりが 「正規ルート」との分岐だったかな~。 すみません。定かではありません。 テープはくどいくらいに丁寧に付けられていて 気がついたら、下降開始ポイントそばの仲良し三本ブナまで 来てしまっていた。 ここでザイル回収班を待つ。 ザイル回収班は、直登ルートを クライミングしてきて、かなり疲労した様子で合流した。 トラロープルートがあっけなかったので ちょっと羨ましい。。。 13時45分。赤水沢に戻って来た。 さて、あのトラロープは何だったのだろうと 調べてみると 6月にテレビ東京が取材に入っていたようだ。 憶測ではあるが、撮影部隊を入れるためのものだったのか。 番組のスナップを見てみると、 私が「こんなハンパに高い場所で トラロープが終わっている」と思った地点だが、 撮影された6月は、 沢に結構な雪が残っていたので ひょっとすれば、雪があればあのロープの高さは 危険な高さでもなかったのかもしれない。 それにしても、撮影から一月も経っているのだから トラロープの回収ぐらいしてもいいものだと思う。 この方が、来た人が喜ぶとでも思ったのだろうか。 だとしたら無粋としか言いようがない。 無粋で済めばまだいいが、 装備も経験もない人が迷い込んだら、どうするつもりだろう。 辿り着けない場所があってもいいではないか。 むしろ、それがいっそう森吉の魅力を奥深いものにしてくれる。 それを、だれもかれもが容易く辿り着けるようにすることに 何の価値と魅力があるだろうか。 原始の姿が損なわれ、ゴミだらけになった展望台から眺める神の滝が、 果たして人の心を打つだろうか。 前編はコチラ […]