少雪の冬と白神山地のブナの夏

少雪の冬と白神山地のブナの夏

藤里駒ケ岳へガイド研修で久々に。

白神山地のガイド人材の養成として
三年の期限つきで始まった、
県知事認定制度。今年がラストイヤーだ。

毎月1回、講習会がありその全てに
出席してはじめて受験できるという認定だ。

わたしは昨年から受講し、今年は去年、
受講できなかった講座2つを受講すれば
全講座コンプとなって、来年試験を受けることが
できるのだ。

ということで残る講座二座のひとつ、
藤里駒ケ岳をガイディングしながら登るという
研修が先週の日曜日にあった。

研修前に予習で登っておきたかったのだが
県南から県北は遠くそして時間が取れず
結局、ぶっつけ本番での研修だ。

藤里駒ケ岳は2010年以来。10年ぶり。

山頂から見下ろした、山腹に
立ち枯れたような白い樹木が目立つ。
なんだろう、と思ったところ・・・。

原因はこれ。
びっしりと、と言っていいぐらい
山腹に折れた枝が累々と積み重なっている。
ダケカンバやブナの枝だが
とくにブナがダメージが大きかったようだ。

当然、数日前までは
登山道にもこうした倒木や枝が
散乱していたそうで、
地元の山関係者の皆様が手鋸で
ひとつひとつ撤去したのだそう・・。

大変ありがとうございます。
今日のガイド研修にはこの撤去作業に
関わった方々もいらっしゃったので
どんなに大変だったのかの、
お話も聴くことができました。

ところで、なぜこんなに枝が
落ちているのか。
理由は今年の少雪が原因だ。
ブナはもともと雪と共存することで
繁栄したと言っていいくらい、
雪によって守られている。

今年は気温が高かったうえ、雪も少なく、
せっかく降った雪は溶けかかって、
ずっしりと枝に凍りつく。

この凍結と重みでだいぶ、ブナの枝が
弱ったようで、風の強かった日に、
無残にも折れてしまったようだ。

本来なら、光合成をして養分を作る季節、
枝を失ったブナの木は、頼みの葉もぐっと少なく、
今年は栄養失調になってしまうのだろう。

まだ生きてはいるが、
樹がだいぶ弱ってしまうのは免れない。

枝の撤去をしたみなさんは
大変だったとの苦労話のあとに
そんなブナたちをとても心配していたのが
印象的だった。

そんな少雪の被害が目立つ白神山地だったが、
今のところ、ブナの実がとっても立派。
ブナは5年ごとに豊作になるというので
今年は、豊作の年ではないのだが、
眺めているだけで、お腹いっぱいに
なりそうに、丸々とした実がたわわだった。

多くのブナが弱ったことで
まるで森全体が急いで子孫の
準備をしようとしているようにも思える。

そしてこれが田苗代湿原。
10年ぶりに訪れたが、あれこんなに
イヌツゲが多かったっけ?
てくらい、湿原には低木が進出していて
雪溶けシーズンなのに水気もあまりなく。

植生の遷移なのかもしれないが
風景はどんどん変わっていく。
地元ではイヌツゲを抜いているようだが
取っても取っても追いつかないとのこと。

そんなイヌツゲの逞しい進出を
その次の進出の機会を伺うかのように
湿原の周りには樺の木などが
ぐるりと取り囲んでいた。

美しい景色を残したい人間と
自然の理のままに
根を伸ばす植物たち。
この複雑な攻防はこの先、結果として
どんな景色を作っていくのだろうか。

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