夏山、経口補水液、持って登ってますか?

夏山、経口補水液、持って登ってますか?

ガイドのお客様には事前に
持ち物リストをお渡しし、その山行に
必要な装備をご用意いただいている。

今年の夏から新たに持ち物リストに追加したのが
「経口補水液」。
最近は、登山のみならず
日常生活においても熱中症対策のアイテムとして
聞いたことや手にしたことのある人も多いと思う。

これまでは自分自身も、
夏山はスポドリと塩、梅干し、という
装備で登っていた。
そうやって塩分補給、水分補給に
気をつけていたつもりだったが、
大腿部が痙攣をおこすなど熱中症の症状に陥ることも。

そんなときは登山者得意(?)のあの漢方薬。
芍薬甘草湯。
足攣りトラブルの頼れるヤツ。
そう、68番は裏切らない。

だが、その天下の宝刀もまた
諸刃の剣だということを
われらが姉御、
山岳看護師のクマクミガイドの講座で知って
とても驚いたのだった。

登山者の味方? 芍薬甘草湯

登山者ならほとんどの人が携帯しているだろう漢方が、芍薬甘草湯。通称、その商品名から68番、などと呼ばれているし、山ではそれで通じるほど。

筋肉疲労などにより、大腿部などが痙攣をおこしいわゆる「足攣り」が起こった時、ものの数分ですーっと痛みと強張りが引いていく。

脚が動かないのでは遭難のリスクが高まる山において、心強い味方がこの芍薬甘草湯なのだ。

足を攣る原因は、筋肉疲労のほかにもうひとつ、脱水症状を起こした時。原因はどうであれ、足攣りという症状においてこの漢方薬はテキメンの効果を発揮してくれ、登山者たちは再び歩き出すことができる。

だが、問題もある。
脱水症状での足攣りは一時的にこの漢方薬で解消されるのだが、そもそもの原因である「脱水」が解決しないかぎり、再び足攣りを発症する。

芍薬甘草湯は、筋肉を緩めることで足攣りをなくしてくれる。だから、もしこの先、急斜面や岩場、難所の下山が待っているのなら、筋肉がゆるゆるではちょっと困る。
山では登りよりも下りで筋肉を使う。その筋肉が働いてくれないとなると転倒などのリスクが高まる。

心臓もまた、筋肉でできている。心臓に不安のある人がただでさえ、心肺機能を酷使する山で、筋肉がゆるゆるになってしまったら・・・。

登山者が飲むべきは、漢方薬ではなく水分と塩分とエネルギー。

あるいはザックに経口補水液があるのなら登山者は、多量の汗で失った体液をよりスムーズに補うことができる。脱水症からはじまる熱中症の遭難リスクを、ぐっと遠ざけることができるのだ。

経口補水液は夏山の味方!

いまやテレビCMでも流れているし、昨今は知ってる人は多いであろう経口補水液。どんなものかといえば、発汗などで失った体液を補うもの、という位置付け。
体液というのは水分とナトリウムなどの電解質で構成されている。失ったこの体液をスムーズに体に吸収させるためのもの。

スポーツドリンクに比べると、糖度が低く塩分が高め。ふだん飲んで美味しいものではない。だが、この配合が水分と電解質が体に吸収されやすい設計なのだ。

普段は不味いだけの経口補水液だが、脱水症気味になってきたときに飲むと意外にも美味しく感じる。もし美味しいと感じたら、体液が不足気味だという自覚を持つことだ。

ならば、山中ずっと経口補水液でいいんじゃないか?
ずっとはキツイと思う。味的にもコスト的にも、カラダ的にも。
スポドリに比べると、ナトリウムが2倍。

塩分とりすぎの恐れがでてくる。

経口補水液を飲むタイミング

夏山の、気温が高めの山登りにおいて、ではあるが飲むタイミングはどうしたらいいか?

一概にすべての夏山に当てはまるものでもないが、目安としてわたしは次のように摂取している。

・登る前

朝から湿度高め、ちょっと動けば汗ばむような日の登山スタート。しばらく風のない樹林帯を登る。こんなパターンを想定。

お客さんには(自分自身もだが)、朝起きたら500mlの水分補給、朝ごはんもしっかり。とお願い。
人のカラダは、起床時は軽い脱水気味なのだそう。夏ならばなおさら。

山中のトイレを気にして、登山前から水分を控える人がいるがこれは夏山は危険。朝起きたら、夜間からの脱水状態をリセットすることが必要だ。

500mlほど水分補給すれば、登山スタートまでにトイレに行って余分な分は出てしまう。それでも不安なら前日からアルコールやカフェインを控えることをおすすめする。

わたしはカフェインに敏感なほうでして、トイレが近くなるので山にいく日はコーヒーはおあずけ。果汁系もなかには利尿作用があるものもあるので、ノンカフェインの麦茶などが定番です。

・登り始め

クマクミさんの熱中症教室で学んだことだが、登山開始の20分ぐらいにかく汗は濃度が濃いとのこと。つまりナトリウムなどの電解質などが多めに出てしまう。

なので、登り始めの段階でいかに汗をかかないかが大事。
とにかくゆっくり。そして体温を上げる要因を取り除く。可能なら帽子を脱いだり、首周りに濡らしたタオルを巻いたり、袖は捲り上げたり。

それでも汗が噴き出るときは、登り始め20〜30分でいったん休憩を入れ、経口補水液を3口程度でも飲んで体液補給。もしおいしいと感じたら、すでにかくれ脱水が始まっているかも。
その後の水分補給を怠らないよう気をつける。

・登山中

行動中に必要な水分は下記の公式で求められる。必要な水分=失う水分だ。

体重(荷物も含め)×行動時間×5ml

5mlの5は、気温が高かったり汗をかきやすい体質の場合は6や7にする。この量の80%は確実に補給できるよう装備する。

結構多いし、重い。だが、夏山でその量を担ぎ上げるか、現地調達するかできなければ、その山は自分にとっては難しいという判断の目安にもなる。この飲料の量をどうするか、解決の目処がつかなければ夏のそのコースは敬遠するべきである。

スポーツドリンクを薄める人もいるが、わたしは薄めずに持っていくことをおすすめする。これを2時間で500ml、ペットボトル1本は飲む。30分に一回ぐらいの割合で飲む。

喉が乾いてなくても水分を口にすることだ。乾きを覚えてから飲んだのでは、すでに脱水症がはじまっている。こうなると、いくら水分を補給しても乾きが癒えた気がしなくなってしまう。

サッパリするからと言って、凍らせたものを持ってくるのはお勧めしない。飲みたい時に凍っていて思う量を飲めなかったり、濃度にムラが出たりでせっかくのスポドリの機能が生かせない。冷たいのを飲みたければ、サーモスなどに入れて持っていこう。

水分補給の際、ときどき経口補水液を飲む。
もし疲労感が強かったり、眠気、体が重い、頭痛がする、イライラするなどを自覚した時は、迷わず経口補水液を。これら脱水症状のサインだ。

以前、夏山でやたら体が重かったとき、経口補水液を飲むことで不調がすっと引いていくことを実感したことがある。以来、わたしは経口補水液は必携となった。

・下山完了

無事下山!さ〜ビールだ!
多少の喉の渇きは旨いビールのための
最高の演出だ!

などと言って温泉で一汗流し、ひたすらビールのために喉の渇きを我慢する。そんなストイックな登山者、よくいます。わたしもです。

しかしこれが危険きわまりない。
下山後であっても脱水症状、熱中症のリスクは同じ。

喉の渇きを感じているときというのは、すでにカラダは脱水状態。なのに温泉で一汗ながしていたら、ますますカラダは危険な状態に。

登山中、必要な量を計算して用意した飲料がザックに残っていたのなら、下山後もそれを飲み切ってしまうことをお勧めする。経口補水液も、飲んで美味しいと感じるならば飲んでしまう。

体内のナトリウムが低すぎると、体液のバランスを保とうとしてこれ以上ナトリウムの割合が下がらないよう、水分が尿として出てしまうらしい。そうするとまた脱水改善が遠のく。水ばかりでは渇きが癒えない原因でもある。

脱水気味の体にビールはとてつもなく美味しいが、きちんと脱水状態のケアをしてから。第一、アルコールは利尿作用があるので、脱水した体に追い討ちをかけることにもなる。

経口補水液は自作できます!

ドラッグストアで500mlペットボトルで130円〜188円ぐらいの経口補水液。何泊かする場合これら日数分かつぐのもナンだかな。という方のために、粉末も売られている。大塚製薬のOS-1の粉末は7袋入りで2800円ぐらい。

恐ろしくたけえな・・・。

そんなときは下記のレシピで。

水1000ml分のレシピ
塩(できれば岩塩などミネラルあるもの)3g(小さじ1/2)
砂糖40g(大さじ4と1/2)
お好みでレモン汁など

これを小袋なんかに入れて、湧水1リットルに溶けばオッケー。

経口補水液、ジュースで割って飲んでいいの?

良かないでしょう。

経口補水液は不足した体液を補うため、小腸からの吸収が最もスムーズな配合割合なのだから、それをカルピスのように割って飲んでは意味がない。
今は不味くても、真夏の山の中では最高に美味しく感じてしまうから割らずにストレートで飲んでくださいまし。

水分もさることながら、忘れてならないエネルギー補給。暑くて食欲が湧かないときも、熱中症の疑いが出た時も無理なく摂取できるゼリー飲料があれば心強い。

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