
標高2236m。
東北の名峰鳥海山へ鉾立口から登って来た。
鉾立口コースは距離は長いものの、比較的緩やかで
また、見所も多い。なので、山頂まで行けなくとも
満足感が高い山歩きができるコースだ。

コースタイムは
6:54 登山口
7:57 賽の河原
8:33 御浜
9:57 千蛇谷、外輪山コース分岐
11:17 山頂小屋 休憩
11:59 新山へ出発
12:19 山頂
12:35 大物忌神社 参拝
12:43 下山開始
16:30 登山口

今回は中三の甥っ子が着いて来た。
特に予定していたわけでもない。
前日に「オレも行こうかな」と
言うので、バスケ部で着ていたウエアに普段のシューズ、
私のサブザックでどうにか格好を整えた。
彼にとっては人生初の登山である。
朝4時30分に起き、その15分後には横手を出発。
6時40分に登山口に到着し、
身支度を整え、念のため準備運動をさせ
7時、人生初の登山がスタートした。
と、言えばかっこいいのだが、彼が山登りをする理由は
ダイエット。三年生で部活を引退してから、
太るのをやたら気にしている。
思春期か。

お盆期間中、不安定な天気が続いたが本日は
風もなく、山日和だ。
賽の河原付近には、
まだニッコウキスゲを見ることができた。
さすがに、残雪はない。

ヨツバシオガマ。

7時57分。賽の河原付近。
1時間歩いたところ。
整備された緩やかな登山道は
初心者の足慣らしにはちょうどよい。
賽の河原を過ぎると、御浜までやや傾斜が強くなる。

8時30分頃、御浜の小屋が見えて来た。
いちおう、この御浜で天気と甥っ子の様子を見て
この先へ行こうかどうか判断する予定。

リンドウが見頃。
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西には稲倉岳がどっしりと。
鳥海山北面が集めた雲が、稲倉にぶつかって立ち上がる。

鳥の海。静かな丸い湖面を眺めて
ここで小休止。
飛び交う虫に甥っ子はたじろいでいる。
現代っ子ならではだが、
ハエや蚊が一匹家の中にいるだけで
大騒ぎする彼にとっては、虫が飛び交う中での休憩は
初体験だったかもしれない。

汗でウエアが背中に張り付くのを
気持ち悪そうにしている甥っ子へ、
ここで引き返すかと聞けば、
もう少し行くとのことだった。
天気も、急変する様子もないので
扇子森を越えたコルまで行こうかと歩き始める。

御浜から扇子森へは岩だらけの、足場の悪い道となる。
振り返れば、日本海と青空。

8時59分、御田ケ原。
御浜では雲が掛かっていた新山が姿を現す。

オクキタアザミが咲きそろう。
アザミと名にはあるが、トウヒレン属。

こちらはアザミ属。チョウカイアザミ。
これで咲いているんだよと言うと、
下を向いているのにと、
甥っ子は意外そうに眺めていた。

扇子森を下りて、私が勝手に
「ハイジのコル」と呼ぶ場所で大休止。
甥っ子がかなり疲労困憊している。
考えれば、彼は朝ご飯はおにぎり一個だった。
いつも大飯を食べているのに、
それでは明らかにガス欠だろうと
湯を沸かしてスープを飲ませ、おにぎりを食べさせた。
これを食べたら、今日はここまでにして
引き返そうと甥っ子に言うと
エネルギーチャージして元気が出たのか
帰らないと言う。

ならば、と「ハイジのコル」を出発し、
八丁坂を越えて行く。
八丁坂を過ぎれば、石畳の整備された道はなくなり
本格的な山道となる。
9時45分、七五三掛。
この先でコースはふたつに別れる。
アップダウンがある外輪山コースと、
谷を行く千蛇谷コース。
新山を狙うなら、千蛇谷が30分ほど早い。
一方、外輪山コースなら、
文殊岳、行者岳、とキリがいいピークがあり
見晴らしもいいので、疲れたならこれらの
途中のピークで引き返しても気分がいいかと思う。
甥っ子に意志を確認すると、
新山へ早く着く千蛇谷がいいとのこと。
どうやら、もはや彼は山頂に登る気満々のようだ。

ならば、この分岐で谷へ下りるとする。

足場の悪い急な下りを、二カ所ほどハシゴで下りて行く。

谷の雪渓は、この季節、だいぶ小さくなっていた。
雪だ、と甥っ子が軽く感動した様子。
途中で、同じぐらいの年齢の子に追い越されると、
気持ち彼の足取りも早くなる。

さて、ここから1時間30分、ひたすら登る。

ウゴアザミや、キイチゴが繁る登山道が
山頂に近づくにつれて、岩の道となる。
お腹もすいてきて、一歩一歩が重くなってくる。
急ぐ甥っ子を引き止めて、ゆっくりと登らせる。

11時17分、山頂小屋前に到着。
ひとまず、ここで早めのランチとしよう。
疲労で呆然とする甥っ子を座らせて、
湯を沸かして
カップラーメンを用意する。
思いの他、ドリンクの消費が激しいので、
甥っ子に食べているよう言い残し、
雪渓へ水汲みに行く。
一人で食べさせて気の毒ではあるが、仕方が無い。
雪渓の水はちょろちょろで、
なんとか汲んでみたものの
ゴミが浮いていて、飲むには躊躇われた。
非常用として、ボトルに詰める。

水汲みから戻り、
湯を煮沸しながら自分はバナナを食べて
12時59分、新山へ。

ジャングルジムだな、と言いながら折り重なる岩を
登って行く。

岩の上で、気分は山男。
思春期らしく、他の登山者の
かっこいいウエアに気後れしてみたり、
すれ違う登山者の、
ふくらはぎの筋肉を感心して見送ったりと
私とは違う視点が面白い。

ここを下れば、新山の直下だ。

あとひと登り。

12時19分、山頂2236m!
ここより他に高いところナシ!
甥っ子は、感激というよりは呆然としている。
ここまでのハードな道のりを考えると、
山頂に着いたことが
信じられないようである。
「あ、下らなきゃなんないんだよな」
唐突に、
ここで終わりではないことに気づいた様子で
さらに呆然としている。

登りはいいが、下りは神経を使う。
岩場を慎重にエスコートして、新山を下る。
チョウカイフスマがお出迎え。

下り終えると、ほっとした様子。
せっかくなので、お参りする。
登頂させていただき、ありがとうございます。
そして無事に下山できますように。

下山は楽だね、と言っていたのだが、
岩場歩きの下りの難しさには辟易した様子。
それに加え、ハイカットの登山靴でないこともあり
つま先が痛くなってきたようだ。
10分置きくらいに立ち止まらせて、
少しずつ歩かせる。
甥っ子も辛抱強く歩いてくれた。
最も、山の中では自分の脚しか、
自分を下界へ運んでくれない。
痛くても歩くしかないのだと、悟ったようでもある。

ハイジのコルまでくれば、再び道は石畳の遊歩道。
あと一息だ。

平らなところを歩きたいとこぼしながら、
少しずつ歩く。
途中、鉾立が見えたので励ますつもりで
ほら!あと少しだよと指差したら、
あんなに遠いのかと逆に凹ませてしまった。
16時30分、念願の登山口着。
レストハウスで冷たい飲み物と、アイス。
そして記念バッジを買って帰路に着く。
夏休みのビッグな思い出となったようだ。
私にとっても、特別な鳥海山登頂となった。
甥っ子が、また登るかどうかは分からないが、
30センチの大足に合う登山靴を、
ひそかに探している叔母である。



