2015年5月17日 後ろのツル道からヒヒパゲ山

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昨年2014年、
美郷町の六郷登山協会の方々のご尽力で
数十年ぶりに復活した山道があると知り、
いつか歩きたいと考えていた。
思いがけず、天候がいまいちな日曜日。
森林限界を超えない山歩きなら
楽しめそうだということで、この復活したての
「後ろのツル道」を辿ることにした。
登山口は六郷東根の六郷ダム。
後ろのツル道は、
この六郷ダムに沈んだ湯田集落に住む人々の
生活の糧を得るための道だったらしい。
「炭焼きの道」とも呼ばれ、
湯田集落の人たちが岩手県側にある
炭焼き窯で作られる炭を運んだ道である。
後ろのツル道の名は、集落から見える尾根が
ちょうど、鍋のツルのように
見えたことに由来するそうだ。
この道の歴史は古く、言い伝えによれば
平家の落人伝承もあるらしい。
何百年も前から踏み固められてきた道、
と地元の人は語る。
ーーーーーコースタイム
(休憩/山菜採り時間含む)ーーーーーーーー
8時17分 登山口
8時38分 旧湯田神社
9時4分  三角点
9時45分 ピーク662
10時58分 分岐(本日はここまで)
13時38分 駐車スペース
コテージや温泉を備えた「あったか山」を
過ぎればやがて六郷ダムに到着する。
広めの駐車場があるが、欲を出して
もう少し林道を進み、登山口そばにスペースを見つけた。
8時17分。ここが後ろのツル道の入り口。
女神山登山口と書かれている。
この道を復活させるプロジェクト発足当時、
この石段は雑草に深く埋もれ、
手すりすら見えにくい状態であったようだ。
このようにきれいに刈り払われ、
おかげで迷うことなく入山。
階段を登りきると、湧き水がある。
カエルのクックッという
澄んだ鳴き声が心地よい。
国土地理院の地形図には、登山口から
旧湯田神社まで登山道の点線が記されている。
杉林の、やや急な登りである。
ソデコの花。
こちら、ソデコの花の受粉後。
実が膨らんでいる。
ホウチャクソウ。苦い。食べるものではないが、
ユキザサと間違えて
おひたしにしたことがある。
ウスバサイシン。地味な花ほど、見つけるとうれしい。
8時38分。旧湯田神社。
三吉さんが祀られていたようだが
今はお社があるだけで、何も無い。
このブログを書くにあたり、情報収集するうちに、
今月亡くなった藤原優太郎さんが
秋建時報に寄せた随想を見つけた。
平成16年5月、まだ整備されていないこの道を
辿ったときのものであった。
当時はまだ、この社に「三吉神社」の
扁額がかかっていたと記されている。
後ろのツル道こと、炭焼きの道は神社から
県境までの約5キロの尾根道だ。
杉林を抜け、登山道らしくなる。
ツクバネソウ。好きな花。
道は、永い時間、
踏み固められてきたことが分かる。
落ち葉でふかふかとしていて、
つまづくようなものもなく歩きやすい。
善知鳥の道に似た雰囲気がある。
ユキザサが見頃だった。
食べられる。今日は愛でるだけ。
なんと、エゾハルゼミ。
新緑のブナにかかせない歌い手だ。
せっかく羽化したものの、
本日は肌寒く風もある。
モチベーション上がらないなあ、
と言いたげである。
9時4分。三角点がある478.7mのピーク。
さほど、展望はない。
展望はないが、新緑のやさしい緑が美しい。
山道脇のブナにはときどき、
かつてここを往来した人による、
昭和20年代の古い署名が見られた。
六郷の歴史を記した
「鐘はかたり、清水はささやく」によれば
湯田集落は1972年から移転が進められ、
1975年には無人化したそうだ。
そして84年にダムが完成し、
集落はダムの底に沈む。
梢の向こうに黒森山が覗く。
簡単に登れる里山のイメージしかなかったが、
ここから一望すればなかなかどっしりとして、
立派な姿であることに感心した。
アオハダの花。普通は高い樹の上に咲くので
お目にかかれない。
たまたま、木が倒れていて
間近に見ることができた。
イワウチワ。雪融けが遅い山道脇に。
9時47分、ピーク662。熊見平、
と呼ばれているようだが、
藤原さんはこの、展望の開けたピークに立って
手帳に「ヒヒパゲ山」と記した。
湯田ダム湖畔の看板にあった
この「ヒヒパゲ」と言う奇妙な名に惹かれて、
この古道を歩いたのだと、随筆で語っている。
しかし、この頂でヒヒパゲ山、
と手帳に書き込みながらもそれは
藤原さんにとっては、
ひとつの仮説としてのメモであったようだ。
文末は、「ヒヒパゲ山」の謎は
これからゆっくり解明する云々、
と結ばれている。
このヒヒパゲ山かもしれないピークは
このコース随一の展望地だ。
往路ではあいにく、
雲があって女神山が見えなかった。
展望のあとは、山道はアップダウンが始まる。
下りの途中、イワナシが見頃だった。
山道には、こまめに赤テープが付けられている。
県境手前のピークを巻く。
急な斜面の下には残雪があった。
この巻き道を過ぎたあたりかが県境で、
70mほど県境沿いに尾根を下ると
平坦な鞍部になる。
その鞍部付近にはミヤマスミレが
特徴的な葉を山道脇に敷き詰めていた。
県境の尾根道。
昨年の刈り払いの苦労が伺える。
一部、痩せ尾根を通過。
地形図の崩壊マークのあたりか。
崩壊マークを過ぎて尾根が広くなる。
10時58分、分岐に到着。
昨年のこの標柱の画像には、
はっきりと記されていた文字も
一冬でかなり不明瞭となっていた。
分岐から東へ行けば、白糸の滝。
さらに奥に降る滝や、女神冷泉。
そして女神山に至る。
分岐から北へ行けば、ブナ見平を経て、
女神山に至る。
しかし、お腹が空いたのでここでひとまずランチ。
採りたてのタケノコを茹でて、
そのゆで汁でカップラーメン。
タケノコが瑞々しくてぷりっぷり!
贅沢贅沢。
満足していると、男性が一人、ツル道をやってきて
そのままブナ見平へ向かって行った。
さて、食べ終わってどうしようかと思う間もなく
小雨が落ちてきた。風も強まった。
したがって、
本日はここまでとして引き返すことにした。
ここまで来ただけでも、
私の真昼岳峰越口から続く真昼山地尾根歩きは
六郷まで伸びたわけである。
帰り、ヒヒパゲ山ピーク、あるいは
熊見平からは女神山を見ることができた。
あの、端正な三角形がそれだ。
午後になると天気は上がってきたが、風はまだある。
杉林の奥に、六郷ダムの湖面がきらきらして見える。
13時38分、登山口到着。
タケノコ、コシアブラなどなど、
お土産もたくさん頂いた。
女神山へは長いコースではあるが、
秋田県側から登るとすれば、取りつきまで
不明瞭な沢沿いの道を行く善知鳥コースよりも
こちらのほうが、コースは明瞭で安心だと思う。
いずれにしても、古くから歩かれた道。
先人の生活に思いを巡らせながら、
彼らと同じ道を辿るのは感慨深いものがある。
今回はこの古道復活にご尽力いただいた方々、
そしてこうした峠道の醍醐味を紹介してくださった
藤原さんに改めて感謝いたします。

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