紅葉の源太ケ岳〜三ツ石山縦走

紅葉の源太ケ岳〜三ツ石山縦走

源太ケ岳から三ツ石山一帯は、八幡平国立公園の山域の中心付近にある。9月20日、本州で一番早く紅葉が始まると言われる三ツ石山へ、松川温泉を起点とした環状ルートで源太ケ岳、大深岳と縦走してきた。

例年より紅葉の訪れは早いようで、三ツ石山山頂付近は赤く染まっており、おそらく縦走路の稜線上にも、この一週間ほどで一気に錦色が下りてきそう。

三ツ石山は人、人、人で大変な賑わいであるが、源太ケ岳は人もまばらで静かな山歩きを楽しむことができる。

コース概要

松川温泉起点に、樹海ラインの道端にある源太ケ岳登山口を出発。三ツ石山からの下山はキャンプ場近くの三ツ石山登山口に出る。

◇歩行距離:約14キロ
◇登り累計標高:約1027m
◇行動時間:標準ペースで7時間ほど

コースログはこちらYAMAPでどうぞ。

駐車場について

起点となる松川温泉には、温泉宿はもちろんキャンプ場もある。登山者用の駐車場もあって水洗トイレ付きなのもうれしい。ただし紅葉シーズンは朝6時の時点で満車となる。その場合はキャンプ場方面、三ツ石山登山口方面に行けば「下の駐車場」を。ただしこちらもすぐに満車になるため、早い到着をお勧めする。

水場について

出発から30分ちょっとのところの登山道脇にある。

行程記録

7時過ぎ、樹海ラインの道路脇から源太が岳登山口に入る。鬱蒼とした森に入ったと思ったらすぐに、砂利道に出て地熱発電の施設横を抜ける。ここからいよいよ山に入っていく。

ところで登山道なのだが、大きめの石がびっしりと敷き詰められており、これがとっても歩きにくい。濡れていると滑りやすいので要注意。

しばらくは樹林帯をゆるやかに行く。
石の道から木道になるも、かなりくたびれた木道はシーソーになっていたり穴があいたりしていて、しかも濡れていて滑りやすく気を抜けない。丸森川にかかる橋は10年ほど前に来た時には真ん中からまっぷたつに割れていたが、さすがにこのように頑丈に復活していた。

駐車場の車の数にしては源太が岳方面から取り付く登山客は、とうに登り始めているのか、そもそも少ないのかさほどでもない。多くは紅葉目当てに三ツ石山ピストンなのだろう。

それでも常に前後に登山者はいて、盛大にクマ鈴やらラジオやらを鳴らしてくれるので、おかげでこちらはクマ鈴なしでも良さそうだ。

丸森川をすぎると登山道はだんだん斜度を増す。

急登の途中に水場がある。ちょっとした広場になっているのでちょうどいい休憩ポイント。水は冷たくおいしい。

水場から数歩いくとモロビが目立ち始めた樹林の合間に、大きな岩を頂いて三ツ石山がのぞく。ここから展望してもくっきりと山頂付近は赤く紅葉している。

標高1000ぐらいからモロビが多くなる。登山道の斜度も増す頃なので、その甘い香りを励みに大きく息を吸い込みながら、気長に急登を登っていく。

ときおりダケカンバも。ややオレンジかがった白い幹をくねらせて一本一本、なかなか個性あふれる佇まい。

登り始めて1時間ちょっとで、大深山荘方面との分岐。

南には岩手山が大きい。

分岐を過ぎて樹高が低くなるあたりから、源太が岳直下の急登に。石がごろごろした登山道で、雑に歩くとバランスを崩しやすく気を使う。

今年は当たり年だったコバイケイソウも、山腹にドライフラワーになってニョキニョキと。枯れた茎をつまんで揺らせば、カラカラとタネが鳴りながら風に乗って地面に落ちる。

こちらのタネはニッコウキスゲ。つやつや。

登山道の傾斜が緩んで、源太が岳のなだらかな山頂部に出る。ちょうどNHKの百名山の撮影初日だった。昨年、和賀岳にガイド下見で登った時と同じボッカ隊とスタッフ。きょうもガイド下見で訪れたのだが、なんという偶然。

源太が岳の標柱が立つ場所から、もう少し北へ登ると広く景色が開けている。こちらで一息いれるのが良い。南を見れば、今日の縦走コースが一望。右から小畚、三石という名前の三角点のあるピーク、そして赤く染まる三ツ石山。その奥には秋田駒ケ岳、さらに奥には羽後朝日を先頭にして和賀山塊、さらにさらにそれらの奥にひときわ高く、美しく、鳥海山がくっきりと。

北を見れば八幡平。ここと同じ名前の源太森も。
源太が岳の名前の由来は、奈良時代、坂上田村麻呂が岩手山麓に潜む賊徒を討つために物見を命じた霞源太兄弟にある。なるほど源太ケ岳からは岩手山がよく見える。さらに源太森のほうは、賊徒の残党を討つために彼らが逃げた北へ向かうため、またしても霞源太兄弟に物見を依頼。彼らは源太が岳から北を展望し、稜線伝いに笹をかき分け進み、今の八幡平に到着した。大きな沼のそばに高い丘がありそこに立つとあたりがよく見渡せる。それが源太森だ。そんな伝説を知ると、眺める景色もさらに味わい深いものがある。

源太兄弟も歩いたかもしれない稜線を大深岳へ向かう。
稜線からは焼山、森吉山もよく見える。

振り返れば、源太が岳と岩手山がかっこよく並ぶ。

気持ちのいい天上散歩で分岐に。ここを南へ向かえばまもなく、大深岳だ。

源太が岳までの急登の疲れにお釣りがくるほどに、気持ちのいい広い稜線。

三角点のある大深岳到着。標高1541M。ここは東日本大震災ののち、標高が1m低くなった。ということは1m分楽に登れる?

大深岳から200mほど下って、小畚へ。
途中、関東森から大白森方面への縦走路分岐がある。縦走路方面は綺麗に刈り払いがされていた。この夏に通った人の話では、途中で薮になったとか。道を見失うほどではないようだ。

登り返しを考えるとナンだけれど、景色が良過ぎてあまりナーバスにならない。登り返しといっても100m少し。見た目ほどではない。

低木対を抜けていく。

山頂直下の登りは石ごろごろの急登で、足場は悪いが振り返る景色は絶景だ。

ミネウスユキソウ、かな。

だいぶ登ってきた。山頂の賑わいも聞こえてくる。

小畚山頂。やや広いので小休止や早いランチをする人も。わたしも一息入れたかったが、人気山域の宿命でクマ鈴がとにかく騒々しい。。。こんな稜線、クマも出ないだろうに、大きな鈴を一個では足りないようで2個3個とぶら下げ、挙句にラジオまでつけている人も少なくなく。。。クマ鈴は確かに登山者に勧められているのだが、その目的と対象となるクマについて無知なまま闇雲につけている人が多いのには閉口する。

山は小さな判断の積み重ねだ。装備ひとつにしても何のための装備で、どんなときに使うのか、どの程度必要なのかの判断が遭難防止につながるもの。それを持てばいいのだろう的対応で、知識は置き去り、自己判断は放棄、な登山者が少なくないと感じる。

今一度、見晴らしのいい山頂から源太が岳方面を振り返り、あとは喧騒から逃げるように山腹を降りていく。この先の小ピーク、三角点があるあたりは割と空いているはず。そこで一息いれるとするか。

ということで、名もなきピーク。三角点があって、三角点の名称は三石。ここも賑わっていた。さすがは晴天の紅葉シーズン。

灌木と笹、モロビ、ハイマツと豊かな植生のおかげで表情豊かな紅葉。山腹を降りていくと、無粋なクマ鈴とは違う涼やかな笛の音が「真っ赤な秋」を奏でるのが聞こえてきた。思わず聞き入って、拍手を送った。

三つ沼。きょうは青空が二つある。紅葉も二つある。

だだっ広い笹の向こうに赤く三ツ石山。ここからでもわかるほど、岩の上には人がいっぱい。

笹を抜けしばらく、モロビの森を。

三ツ石山はたいそうな賑わいで、狭い山頂で休憩している人たちも少なくなく、タッチアンドゴーで即座に下山。南に回ると紅葉はさらに華やか。

遠くの草原と池塘は栗木ケ原。昨年、松沢から遡行した楽園。

三ツ石山からの登山道は石ごろごろで結構、歩きにくい。慎重に下って三ツ石山荘に。ここもまた賑わい。トイレを借りて早々に退散。

小屋周辺は綺麗な湿原。草紅葉とモロビの森のコントラストがいい。

松川温泉へここから1時間半ぐらいか。モロビの香りを味わいながら。

松川大橋方面は現在通行止め。

モロビがなくなりブナの森となるころに、下界の車のエンジン音も聞こえてくる。急な道をのんびりと下って、14時に下山完了。

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