2017年4月22日~23日 大鏑山へ単独テント泊で(前編)

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序章はこちら

 

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大鏑山は宮城県と山形県の県境を成す、
標高1119.2mの、とてもとても地味な山だ。

何の見所もなさそうなピークであるが、
小鏑山こと禿岳、鏑山こと神室山と
そしてこの大鏑山を、
勝手に鏑三山と命名してからというもの
私にとっては特別な一座となった。

鏑(かぶら)は鏑矢の鏑かと推測すれば、
遠い昔、中央政権と地方豪族の
戦の場でもあったこの地域の歴史を
その名に刻んでいるように思えてならない。

3つのピークは、何度登ったところで
鏑の文字のほか何も語らないのだが、
それでもいいのだ。

ただ、無性にかきたてられるのだ。

なかでもこの大鏑山、
鏑三山で唯一登山道がない。

地形図に記されている点線は廃道である。
そして最短距離を鬼首道路から
取ろうとすれば、軍沢川がそれを阻む。

なのでこの川を抱く谷をぐるっと
迂回して、雪を使って尾根をえんえんと
辿ることになる。

私の体力では日帰りはムリ。
テントを背負っての一泊行程となる。

2014年の夏に、山形県側の沢から
一度はピークを踏んではいるのだが、
当初計画した雪山ルートでの登頂を成功させたく、
そしてできれば単独登頂したく
今シーズン、再びトライした。

ーーーーコースタイムーーーーーー

07:42 鬼首トンネル宮城側より入山

08:47 林道クロス

08:15 P864

10:00 P954

11:15 県境889のコル

13:56 P1074

14:35 大鏑山

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

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今シーズンは3月上旬に一度偵察
鉄砲平を越えた県境まで入り、
その翌週に勇んでテントを背負って
トライしたものの、天候と雪の状態で
大幅にタイムロスして撤退。

 

来シーズンに持ち越しかと諦めかけたものの
この土日、行くなら今だ!と閃いて

最後のチャンスをものにするために
またいつもの鬼首道路脇にやってきた。

 

いざ!とザックを背負って行く手を見るなり
思わず「雪!」と叫ぶ。

雪がすっかり融けている。うかつだった。
まさかここまで融けているとは1ミリも
考えていなかった。

 

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7時42分、

トンネル横のフェンスをすり抜けて尾根の先端。

雪が前提の今回の山行である。

まさかテント泊装備かついで薮こぎするとは
想定外である。もうこのまま帰って
プリズンブレイク一気観したほうが
よっぽどかいい休日になるんじゃないかと
本気で考えるも、少し登れば
雪が残っているはずだと、気持ちを切り替える。
それに

2013年5月にトライしたとき
薮こぎに加え、雨だった。
今日はかなりマシ。

 

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薮をこいで100~150mほど上がると
雪が出てきた。よかった。

 

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8時47分、林道クロスポイント。

3月上旬には妖怪のような迫力の雪庇があったが
もはや春である。

 

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鬼首トンネル真上のピーク864手前。

幹が折れたブナ。3月には折れてなかったような。

 

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9時15分、ピーク864から先、
鉄砲平手前までは
秋田県と宮城県の県境尾根を辿っていく。

 

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お馴染みシンクロブナ。メジャー山域なら
夫婦ブナとか命名されるんだろうな。

 

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シンクロブナを過ぎるとブナ林の山腹を登っていく。

県境はピークを辿るがそこは巻いて鞍部を目指す。

途中地形図には出ていない沢地形がある。

横切るのはちょっと気持ち悪いので
沢の手前で尾根に上がる。

 

沢の上には雪庇が見えるのでいい目印になる。

この山腹は、北側に崩壊地形があり
ルートの目印になるものの、
変化のない広い場所なので、帰りのために
ルート旗を設置。

 

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9時44分、再び県境尾根と合流。

下り口にルート旗を2本置く。
この先は鉄砲平を過ぎるまでなだらかだ。

稜線に出ると、さすがに風があるのでウエアを調整。

 

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そしてエネルギー補給。

一人歩きのときは食欲が出ない。

ちっとも食べたくないのだが、
シャリばてになるのは目に見えているので
ムリヤリにでも食べる。

 

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10時、ピーク954。

ここは神室連峰のビューポイントだ。
本日も小又山から天狗森の稜線と、

 

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梢の向うに親分もくっきりと!

 

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あと少しで鉄砲平手前のブナ林だが、
尾根の雪はご覧の通り。再び薮漕ぎだ。

 

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10時12分、薮を抜けてブナ林に到着。

 

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ここからはコンパスセット。

そして、前回風に地形図を飛ばした失敗から
今回はこのように、地形図の袋を
コードでビレイ。

 

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地形図で919ピークが記された鉄砲平へは
小さな沢地形を超えていく。

雪はまだしっかりしていたのでほっとした。

 

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919のだだっ広い地形に登ると
これまた気持ちのいい平坦で
のびやかなブナ林が広がる。

 

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コンパスなしでは怖いくらい
変化のない地形。美しい。

 

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さて、一番の気がかりの小沢。

水が流れる音に、ひやっとしたが
雪は締まっていて通過できそうだ。

毎度ながらこの沢を渡ると、日常を離れ、
異界へ入っていくような気持ちになる。

 

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11時19分、前回偵察で来た最終ポイント。

小さな平たいピークに
枝をうねらせた大きなブナが立つ。

 

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ここから先は、私に取っては未踏ルート。

2013年に諦めた稜線にやっと入っていくのだ。

 

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11時37分、889のコルを超えた先の

ピークは雪庇の壁に阻まれ
登れなかったので巻いた。

写真は振り返ったそのピーク。

 

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この稜線はアップダウンがあるものの
途中のコルがなだらかで気持ちいい。

 

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広い尾根にはルート旗を打つ。

P1009に出る。12時14分。

大鏑山がすぐそこだ。

今日は途中にテント泊して明日、登頂予定だが
予定よりだいぶ早い。

何だか今日のうちに行けそうである。

 

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P1009を過ぎるとまた薮である。

横に雪庇が落ちたあとの雪があるが
状態が見えず、安全確認ができないので
薮道を選ぶ。

下りなのでまだマシだが
明日、この薮をこいで登り返すのか。

 

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薮を抜けるとだだっ広い雪のピーク。

952コル手前の小ピークだ。
12時26分。予定ではこの直下にあるブナの
林をテント場とし、一日目の行動終了だが
予定より1時間以上も早い。

 

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なかなか気持ち良さそうなテントサイト。

ここにテント設営し、
空身で大鏑ピストンも考えたが、
そうなると微妙に時間が足りない。

そしてこの先を単独での空身でと考えると、
何かあったときのリカバリーが厳しい。

 

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なので、一泊装備を背負ったまま
今日のテント予定地を過ぎて先へ。

こちらも気持ちのいいブナ林。

 

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地形図で崩壊マークのあるピークに出ると
再び薮である。こうも薮が出ていては、
今週でこのルートはラストチャンスだな。
薮こぎしながら思った。

 

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13時56分、大鏑山の肩、ピーク1074。

だだっ広いピークで神室連峰の
見晴らしが素晴らしい。

 

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親分とその仲間達がぐるりと。

 

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南は最上の町だろうか。

 

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そして小鏑山こと、禿岳。

いやはや素晴らしい場所だ。

今日は絶対ここに泊まるわ。

スマホの電波も入るし。

 

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あとはこの先に大鏑山である。

 

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なだらかだが、あの先がピークである。

2014年に沢から詰め上げて踏んだピークである。

 

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14時35分、薮が見事に雪でパックされた、
だだっ広い大鏑山の山頂である。

三角点は手前の、矮小ブナの中ではあるが
雪のせいかここが一番高い。

大鏑山を知って5年、やっと
思い描いたルートを使っての登頂が叶った。

 

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細いブナの向うに、鏑山こと神室山。

小鏑山もこの正反対にあるが
ブナに隠れてしまっている。

それでも鏑三山は、地形図通りに
直線上に並ぶことをこの目で確認できた。

我ながら何と言うマニアックな歓びだろうか。

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