静かに歩けそうだったので、
久々の産沼コースに下りて行くことに決定。
登山道は雪が多く残り、ときどき踏み抜く。
本日、こちらのコースを歩いた人はいないようで、
薄っすらと汚れた雪渓に、踏み跡はない。
それでも、灌木帯で見晴らしのいい高度からは
辿るべきコースが俯瞰できて、
楽しく快適に下山を楽しんだ。
遠くに、笊森避難小屋が見える。
しばらく行けば、産沼を通り過ぎた場所に
笊森コースとの分岐があるはずだ。
地形図を確認すればその分岐点のそばには、
小さな池がふたつ夏道の西側すぐにある。
等高線の間隔は広くなっているから、
開けた場所に出るはずだ。
13時44分。産沼。
このあたりは、かなり雪があって、
登山道は完全に埋没。
地形図を見れば、この産沼の東側を巻いて、
夏道があるので、そのように歩いた。
雪が途切れれば、
登山道は雪どけ水で沢となっている。
こちらのコースは、思ったより
登山道の整備が成されていることにちょっと驚いた。
だだっ広い雪原に飛び出た。
13時55分。産沼から10分ほどのポイント。
しばし立ち止まり、方向を確認。
どうやらここが、笊森コースとの分岐点のようだ。
目印にと考えていた二つの池は、雪の下。
よく見れば、広い雪原の真ん中に
赤いテープを巻いた棒が刺さっている。
東側に、もう一本。
そしてよく見ると、
その反対側の西側の薮に、
赤いリボンが下がっていた。
どうやらこちらが、須川温泉への夏道だ。
濃い薮を刈り払った、立派な夏道が出ていた。
ここからしばらく、
平坦な道を西へ進み、傾斜が出て来れば
やがて、沢を渡ることになる。
沢を渡れば、登山道は向かいのピークを巻いて、
北西に方向を変えて伸びる。
そんな手順で考えながら、夏道を辿った。
途中で小休止を取りながら、20分ほど進んだら
越えて来たピークが見えて来た。
このコースは沢を二つ越えなければならないのだが、
沢の状態はどうだろうかと、少し気がかり。
登山道は相変わらず立派に整備され、
階段状に丸太が組まれていたが、
ときどき、雪に隠される。
ここまできて、西に向かっていた丸太階段の登山道が
急に南に向きが変わり、
見れば赤テープも下がっていたので
そちらへ下って行った。
さて、ここからが右往左往の記録になる。
地形図では、登山道が急に南に向くポイントで、
沢の徒渉があるのでこの時点で私は、
てっきり沢に差し掛かったのだと早合点していた。
南向きになった登山道を下って行くと、
たしかにそこには、
沢らしい地形が雪に埋もれて開けている。
ならば、その対岸に夏道の続きがあるはずだ。
対岸は薮が出ていて雪が途切れている。
雪に埋まった沢を横切って、
夏道を探して、しばし下る。
20mほど下って、どこにも夏道がないので
下りすぎたのかと、いったん登り返した。
そして15mほど登ってみたが、
対岸の薮に夏道らしきものは見当たらない。
ここまで続いた夏道は、
とてもよく整備されていたから、
あるとすれば、すぐにそれと分かるほどに
明確に、薮が刈り払われているはず。
しかし、それが見当たらない。
地形図を見れば、
沢を横切ってすぐ対岸に夏道があるはずだった。
いったん、沢を対岸にもどり、
夏道が出ている場所に立つ。
これは獣道なんかじゃない。
立派な夏道だ。
が、この続きがない。
気持ちがざわついた。
時計を見れば14時過ぎ。
夏道は見当たらないが、目の前の薮をこえれば、
合流するはずの須川コースが見えるはずだ。
ここまで、だいぶ標高は下がっていたので、
山頂直下のように、
下山ルートを俯瞰することはできない。
下れば下る程、
ルートファインディングが難しくなる所以のひとつだ。
対岸の、あの薮に強引に入って行けば、
さらに視界は悪くなるだろう。
地形図をまた確認する。
顔を上げると、栗駒山が見える。
徒渉ポイントにいるとすれば、
栗駒山はもっと後方に見えるはずだったので
混乱した。
ふと怖くなり、登り返そうと決意した。
今、14時20分近いが
山頂まで16時ぐらいには戻れるだろう。
そこから須川コースを下れば、
明るいうちに下山できるはず。
急げ急げと数m進んだところで、
ふいに足を止められた。
木の枝に登山靴が引っかかったのだ。
なかなか取れない。しつこいくらいに取れない。
かがんで、
引っかかった小枝を指で靴から外しながら、
その足元の立派な登山道を、改めて眺めた。
そして、この道で間違いはないはずだと、
思い直した。
再び、沢だと思っているポイントに降り立って、
地形図と現在地、そして高度を確認した。
先入観を捨てて、見たまんまの景色と、
見たまんまの地形図を重ねあわせる。
目の前に広がるのは、徒渉点の沢ではなかった。
地形図をよく見ればわずかに谷になっており
ひょっとすれば、
ここは地形図に沢マークこそないが、
枝沢なのかもしれない。
だとすれば、本命の沢はここを
もう80~90mほど下りたところにある。
徒渉点の沢だと思った地形を下って行くと、
足下の雪の下から、水が流れる音が
聞こえはじめたので慌てて岸の薮を伝って下りた。
うっかり踏み抜いて、
思わぬ深さだったら這い上がれない危険もある。
やがて、雪に埋まった沢に出た。
見れば、少し離れた場所に赤いリボンが下がっている。
どうやら、ルートは正解だったようだ。
やれやれ。
20分ほど、右往左往したことになるが、
もっと長い時間に感じた。

徒渉する沢の対岸の小ピーク。
この北側の山腹を巻いて行く。
地形図を絶えず確認しながら、
丁寧にルートを取った。
徒渉した沢は、緩やかに北側へ流れて行く。
地形図に、その沢のカーブを照らし合わせ、
現在地を確認しながら、進む。
あとで調べたら、
この沢の名前は「三途の川」。笑えた。
三途の川を渡って、現世に戻ってきた心境だ。
ピーク1232の鞍部を越えると、夏道が現れた。
ゴロゴロとえぐれた夏道を下って行くと、
最後の徒渉点が見えて来て、
見覚えのある須川コースとの合流点に出た。
ほっとした。
最後の徒渉点。ゼッタ沢を越える。
15時20分。名残ケ原。
振り返ると、ガスが栗駒山に迫っている。
登り返していたら、
山頂に着く前にガスにまかれていたことだろう。
登山道も不明瞭なルートを、
焦りながらの登り返しでガスに巻かれていたら、
と思うとぞっとした。
15時50分。須川温泉駐車場。
ガスは濃くなり、
やがて栗駒山も、秣岳も見えなくなった。
さきほどのルートを見失ったポイントで
このガスが出ていたら、
現在地の割出しも難しくなっていただろう。
歴史に「たら、れば」の話はナンセンスと言うが
山歩きでは、「たら、れば」の振り返りで
一つの経験から、多くを学べるものだと思う。
栗駒界隈のユルい山歩きを目論んでいたが
思いがけず、
ハラハラドキドキな山歩きになってしまった。
残雪期は、簡単なコースの山域でも
思わぬアクシデントがある。
くれぐれも、装備、計画に落ち度がないよう
このシーズンを楽しみたい。