2014年5月3日 箱ケ森で抹茶を一服

2014年5月3日 箱ケ森で抹茶を一服
横手市から盛岡へ、御所湖にさしかかるあたりから、湖の向こうに
箱ケ森は見えてくる。ここから眺める姿からは、
まだその名前の意味が分からない。
やがて、御所湖を抜けてクライミングジムのワンムーブへ向かう道から
改めて見上げれば、その形は目を引くほどに見事な台形で、
ようやくその名前にニヤリとなる。
標高865m。盛岡市西側にある里山だ。
箱ケ森、南昌山、東根山で紫波三山を成す。

 
形のユニークさに惹かれて、いつか登りたいと思っていた。

登山口はいくつかあるようだが
本日は猪去沢からのコースとした。途中、こんな看板がある。

案内図も2つ、掲げられていた。
箱ケ森から赤林、東根山へ抜けるロング縦走ルートもあり
興味が尽きない山域だ。

林道は登山口よりかなり手前で通行できなくなっている。
この先は土砂崩れ。ジムニーが一台、果敢にも越えて行ったが
その少し先で倒木に阻まれて、クルマはそこまで。
10時、クルマを脇に停めて出発。
先行者のクルマ2台も道路脇のわずかな空き地に停車させている。

この林道脇には、石の断面にこんな木の化石を
見つけることができる。

林道脇に珍しいスミレ。
エイザンスミレというらしい。
良く見かけるタチツボスミレと、葉っぱの形が大きく異なる。

本日はニリンソウや、キクザキイチゲ、オトメエンゴサク、
スミレサイシンなど、見頃の花が多かった。
エンレイソウも。
秋田ではあまり見ることのないシロバナも今日は
見られるのではないかと、エンレイソウ好きにはちょっと期待。

10時26分。
きれいなナメ滝が林道脇に。オガセ滝。

さて、林道はというと、すぐ横を流れる沢が
おそらく昨年の記録的な豪雨の際にかなり暴れたようで
この通り。川沿いには未だに流木が積み重なっていた。
また、土石流で洗われたらしく、きれいなナメの沢床を見ることができた。

箱ケ森の登山ルートは環状ルートが取れる。
ここがその合流ポイントとなる。
右回りに回るコースは、急。左回りは登りがなだらか。
左回りコースの登山口は、この土砂跡を越えていったところ。
土石流で分かりにくくなっている。
本日、私は右回りコース。急な方を登りに使う。
地形図を見る限りこちらを下山に使うにはちょっと、危険に思えたので。
右回りコースは、この林道を直進する。

10時42分、登山道。
花の写真を撮ったりでブラブラしてたら
林道歩きだけで40分もかかってしまった。

杉が混じる山腹を、最初はジグが切られていたが
やがて登山道は、尾根をまっすぐに辿り始める。

なんと、コシアブラ。もうそんな季節か。
いくつか頂いて、その香りを嗅ぐと、
もうきりっとした冷酒が頭に浮かんでしまう。

新緑のブナの森は涼しく、遠くからは
ツツドリのポーポーという長閑な声が聞こえてくる。

ムシカリ(オオカメノキ)もかわいらしく。
花は中央の小さいのがそれ。まわりの花っぽいのは
見せかけの装飾花。

11時20分、盛岡方面展望地。
この看板は他にも「◯◯展望地」と記されたものがあったが
あいにくどれも、展望するには樹木が視界を塞いでいた。

やや急な登りが、広い尾根に出て一段落すると
しばらくだらだらと、緩く登って706mのピークに着く。
気持ちのいい開けたピークで「ブナ原生林休憩地」の標識がある。
「原生林」とは記されているが、見渡すブナはみな細く
伐採後の二次林なのだろう。

昨年の豊作で落ちたブナの実が
あちこちで発芽していた。

ブナ「原生林」のなだらかな登山道は
気持ちよく乾いている。
脇にはツルシキミがそこかしこで、蕾を準備していた。
ヒメアオキの、つやつやな楕円形の赤い実も、
早春の見晴らしのいい草地によく目についた。

見過ごし勝ちだが、かわいらしいコヨウラクツツジ。
咲いたばかり。

ブナ「原生林」のなだらかな登山道を
少し下ると、登山道はやや広くなってその真ん中に
大きなクロベがどーんと待ち構えている。
12時4分、標識にはクロビの大木。この辺ではクロビと呼ぶらしい。

クロビを過ぎて10分ほど行くと、このコース一番の難所が迫ってくる。
約130mほど、ロープが張られた急登だ。
写真では分からないが、両手を使わないと登れない。

12時33分、急登終了。
雪が消えたばかりの地面には、カタクリの群落と
キクザキイチゲ。トリカブト。

プレートは9番。あとわずかで山頂だ。

なんと、コバイケイソウらしき植物。
こんな標高にもいるんだと、目を疑う。

オトメエンゴサクかと思ったら、ちょっと違う?
ミチノクエンゴサク。

12時49分、広い山頂に到着。
一面、キクザキイチゲやカタクリがかわいらしく咲いていた。

標柱から盛岡方面が見える。

さて、春の里山のお楽しみはコレ。
モンベルの野点セット初稼働。

頂きものの白松がヨーカンも持ってきた。
重厚ながらも上品な甘さが、疲れた体にうれしい。
湯が沸いたら、お薄を一服点てる。
お茶は「葉室の昔」。昨夜、茶こしで濾したのを棗に入れてきた。
濃茶用としても使う抹茶だけあって、香りが素晴らしく良いのだ。
そして、山での一服がこれほど美味しいとは!
しみじみと体に染み渡る。

広い山頂の片隅には、岩手の里山らしい獅子頭が祀られている。

13時45分、下山。雲行きが怪しくなってきた。
下山には環状ルートをとる。わざわざ下山コースと書かれた標識。
確かに、登ってきた登山コースを下山に使うのは
あのロープが張られた急登を考えると危険極まりない。

下山コースは地形図で見ても分かるように
なだらかに下って、広いマクラ山を越えて、もと来た林道に続く。

今日はニリンソウが盛りで、ときどき似たような葉っぱの
トリカブトがそれに混じる。

下山コースで、目当てのシロバナエンレイソウを見つけた。
同じエンレイソウでも、花も大きく華やかだ。

今年初のシラネアオイ。まだようやく蕾から開き始めたばかり。

14時29分、マクラ山。地形図でも分かるように
とにかくだだっ広い山頂。
マクラ山を過ぎてピーク528手前を東に曲がると、
杉林の林道っぽい登山道となる。
マクラ山とピーク528の鞍部は、道がやや分かりにくい。
地形図を見ながら鞍部に着いたら、東に曲がると覚えておくといいと思う。

沢の音が聞こえてきてやがて、土砂に埋もれた沢に出る。

林道を再び、歩く。
林道は倒木が多く、歩きにくい。
車に着いたら、雨が落ちてきた。セーフ。

今年の初物コシアブラは、もちろん天ぷらで。
粗塩をちょっと付けて食べると
独特の風味が春の味となって口中にふわっと広がる。
何ともいえない幸せな気分になる。
そこへ、程よく冷えた純米酒を含むと、さらに春の幸せは広がって、
今日の山行で辿った急登や春の花、ツツドリの声などが
柔らかく思い出されるのだ。


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